第9話 リノベーションしちゃった

 勝手に人にスキルを与えて、勝手に何やら制限つけた挙げ句責任押しつけて、姿を隠した自称『神さま』。


 ……いないものは仕方ない。どうせ、呼んだって簡単には出てこないだろうし。


 まずは、目の前の問題を解決しないと。



 とにかく、目的地だ。あてもなくさまよっていては疲弊していくだけ。


 目的地……辺境の領地。



 うーん、どうせなら、過ごしやすいところがいいよね?


 将来があるのか、そもそも私はホントに転生なのか、一時的に意識を飛ばされているだけなのかも判別出来てないけど。


 まあ、ルクレツィアが受け継ぐ土地なら、健気な彼女のためにも、なるべくよい環境を作ってあげたいし。


 でも、北、かぁ。


 別に東西南北、まるっきり地球と同じ世界観にする必要はないと思う、でも。


 試しに『温暖な北の辺境』って念じるように、同じ言葉を口にしてみたけど、変化はない。


 おそらく、自分の中である程度具体的というか、しっかりしたイメージがないと、スキルは発動しないみたい。


 だって、念じてはみてるけど、心のどっかで違和感あるんだもん。


 固定観念って、侮れない。


 でも、やっぱり冷暖房調整しにくいこの世界(多分中世から近世の時代をイメージされている)で、温暖で過ごしやすい環境って、大事。


 温暖な、北の辺境……別に辺境が悪環境ってことはないはず。


 むしろ、都会の喧騒から逃れた、ゆったりまったりスローライフに適した田舎、とか。


 ああ、リゾート地をイメージすればいいかも。


 北は北だけど、夏は冷涼、冬はぽかぽか、な感じの。


 あ! 温泉とか?


 あちこちに温泉があって、地熱も高めだから、そこまで寒くない、とか?


 いいじゃん、いいじゃん! 美肌の湯とか、腰痛に効く温泉とか。


 もう、身体中痛いし、一応拭いてはもらっているけど、正直もうお風呂に何日も入っていないんだよ、実は!


 北の自然豊かな温泉リゾート! 響きも素敵!


 ……でも、夏は、暑いかも。


 いや、どっかにあったよね?


 冬は温暖で、でも真夏でも、そこまで気温が上がらないってところ。


 季節風の関係で、寒流から冷えた空気が流れ込んで来るから涼しいって土地。


 寒流、か。なら、海も近い場所だよね?


 海辺じゃなくていいけど、そこそこ気候に影響するくらいの距離感に海。


 うん! どうせなら海鮮食べたいし。


 新鮮な魚介類が輸送可能なくらいには海があって欲しい。


「北の辺境は海辺の、暑すぎず寒すぎずの快適温泉リゾート! 明日には到着できる場所!」


 脳内にゆったりリラクゼーションスポット思い浮かべながら、そう叫んでみる。


 途端、気温が少し上がった。


 と言っても、暑いわけじゃなくて。


 身体をつつむ空気が、ふわっと温められた感じ、かな?


 そして、かすかに届く、磯の香り。


 あ、わりと近くになっちゃったんだ、海?



 


 というわけで。


 翌日の昼前には、ようやく目的地に到着!


 ちゃんと温泉付き別荘完備! ゴージャスというより、牧歌的な癒し系建築のリゾートホテル風。


 きゃー! 素敵!


 

 

 


 

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転生悪女の命名権(ネーミングライツ)~逃げ出した創造主の代役なんてゴメンです! 清見こうじ @nikoutako

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