第3話 冤罪をかぶせられちゃった
私の心の叫びには誰も答えてくれず。
まあ、声に出したところで、周囲にいるのは、いわば
こういうパターンだと、答えてくれるのは神さまか女神さま。
あ、この場合はゲーム制作者なのかなぁ?
ともかく、そういった『超越した』存在からは反応なし。
夢とも現実とも判別しないうちに、断罪イベントはどんどん進んでいき。
「エリーが逆らえないのをいいことに、散々嫌がらせをしてきたそうだな! 公爵家令嬢ともあろう者が、なんと品性下劣な!!」
あ、エリーっていうのは、ヒロインの初期設定ネーム。
愛称エリー、正式にはエリザベス。
青バラは、フルネームの他、愛称も自分で設定できて、親密度が上がると、攻略対象が愛称で呼んでくれる。
逆に狙っている攻略対象に愛称で呼ばれるようになったら、ゲームは順調にハッピーエンドに向かっていると分かる。
ちなみに私は、フルネーム「マイラ」、愛称は「マイ」で登録していた。
本名が麻衣だから。
このゲームのいいところは、初期設定の名前でなくても、オーソドックスな愛称だったら、あらかじめボイスが設定されていて、自分で登録した名前でも、ちゃんとボイス付きで呼んでくれるんだよね。
CV目的でゲームを始めた私には、それはめっちゃ嬉しかったりする。
まあ、それは置いといて。
一応ここは、釈明しないと。
「嫌がらせなんて、そのようなことをした記憶はございませんわ」
「言い訳するな! エリーが慣れない行儀作法やダンスで失敗するのを、厭味ったらしく嘲笑っていたそうじゃないか?! 質問に答えられないと、冷酷な眼差しで見下していたと! エリーがどれだけ、いたたまれない思いをしたことか!」
……えっと、それって、嫌がらせ?
いや、確かに、あんまりいい態度ではなかったと思うけど。
まあ、失敗した本人からしたら、いい気分じゃないのは、分かるけど。
青バラプレイ中は、視点がヒロイン側だから、「『どうしよう! 緊張してる! ああ、皆さん、きっとこんな劣等生と一緒に学ぶなんて、って思っているに違いない……(泣)』とかちょっと被害妄想気味かな、ってくらい卑屈なモノローグがテロップに流れていた。
何かしらの秀逸な才能があれば庶民でも入学が許可される王立学院だけど、何かの間違いで入学許可書が届き、特例で入学してしまったという、わりとご都合な設定だったから自信が持てないのもしかたないんだけどさ。
ちょっとイラっとしていたけど、それもまあ、ヒロイン属性か、と思ってスルーしてた。
たいてい、そうやって落ち込んでいると、攻略対象が色んな形で慰めてくれるイベントが発生していたし。
でも、なあ。
やっぱりこうやって、悪役側に立ってみると、やっぱりイラつくよね。
嘲笑っていた、というより、あきれていた、という方が正しいし。
ヒロインの失敗に、じゃない。
すぐポロポロ泣いて落ち込みまくるヒロインと、そうするとワッと押し寄せて慰めまくる攻略対象に、だ。
『君は頑張っているよ。十分にね』『そんなところも可愛いよ』『そのままの君が、好きだよ』
いいよ、確かに。耳触りの良い声と言葉で、とろとろに甘やかしてもらえるのは!!
でもさ! それじゃ私らお嬢さまが……少なくともルクレツィアが努力してこなかったとでも?
今は、分かる。この子が、ルクレツィアがどんなに頑張っていたか。
行儀作法に、言語を始め地理、歴史、経済、その他もろもろ自国や世界情勢の勉強に、将来の王妃として王の片腕になれるように君子論まで!
学校の授業なんて簡単すぎるって思っちゃうくらいには、すでに学びつくしていたんだよ!
10歳になるかならないかの頃から!
そりゃ、庶民にはそもそもそんな機会がありませんでした、と言われたらそれまで。
でも、ラッキーとはいえ、その機会に恵まれて、こうして国内最高峰の学校に入学したんだから、イチャイチャ恋愛遊戯にかまけてないで、もっと食らいつけよ! とか思っちゃう。
……ああ、結構、ルクレツィアに同調しちゃってんだな、私。
本体というか、前世は、私だって一般庶民だってのに。
「ルクレツィア! そなたの悪行には嫌気がさした! 婚約破棄は当然だと思え!」
「悪行? 何が悪行だと……」
「困惑しているエリーに救いの手も差し伸べず、傍観していたことだ!」
だって、色々する前に、あなた方攻略対象が、慰めまくっていたでしょう?
内容はどうかなぁ? って思うくらい甘やかしていたけど。
というか、何言っても、聴く気もないな、こいつ。
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