第11話 総合スーパーで普通に過ごす

 総合スーパーで買い物の後のことです。今日のお昼はファーストフードにした。ぬいぐるみのアリシアはナゲットをガツガツ食べている。


 勿論、生の猫など出入り禁止である。それでも異変を感じたのか、店員さんが近づいてくる。


 アリシアの頭をガブリと強引につかみ。人形遊びをしてるように見せる。


「動物の飲食禁止は分かるが。何故、外で食べないのだ?」


 テイクアウトか……。それは盲点であった。


 しかし、店内で食べ始めてしまった。その後もアリシアはガツガツ食べる。


「夏樹、飲み物はないのか?」


 黒猫の姿にてストローで飲むのか?


「ひいいいい、この姿でここまで不便なのは初めてだ。術式を使って呪ってやる」

「他のお客さんに迷惑です。静かににしていないとスクールバックの中に突っ込むぞ」


 そう、この世界は猫の為に動いている訳ではない。ファーストフードで食べ終わると一階のイベントスペースに向かう。


「地方お弁当いかがですか?」


 地方お弁当フェアである。スーパーのイベントとしては定番である。


「加賀百万石のお弁当いかがですか?」


 えらくピンポイントなお弁当だな。ずらりと並んだ加賀百万石のお弁当であった。


「夏樹……」

「ダメです。よそはよそ、うちはうち」

「まだ、何も言ってないぞ」


 アリシアは麦メシと野菜スープの生活から少しずつ贅沢になっているのであった。


 その後、ガチャポンのコーナーに行って色々見て周る。


「働く車のガチャポンが欲しい」


 何だ、アリシアは生意気なことばかり言っていても可愛い所があるじゃないか。


「一回だけだぞ」


 わたしがお金を入れると。


「ドンブラココ、ドンブラココ。ショベルカー出よ」

『ガラン』


 出たのは霊柩車であった。


「なんでやねん!」


 確かに霊柩車も働く車だ。しかし、これで収まるアリシアである訳がない。


「も―一回!!!」


 仕方がないな~。わたしは渋い顔をしてお金を入れようとする。


 と……。


「こっちの、サ〇リオのガチャポンがいい」


 あー著作権にうるさい所だ。


「だからダメだって。出たトイが紹介できない」

「すみっ〇〇らし、も?」


 何故、現代日本のキャラクターに詳しい?そこの理由を聞くと。夜中に独りで携帯を使い、色々観ているらしい。それで、昼間の授業中に寝ているのか。結局、働く車をもう一度引く事になった。


「アイヤー、ドンブラココ、ドンブラココ!」

『ガラン』


 消防自動車か……。


 無難なトイである。勿論、霊柩車は捨ててしまった。


 ま、外れとして作られた物だ仕方あるまい。


「満足した、銅だこに寄って行こう」


 ホント、色々詳しくなったな。


 しかし、銅ダコは長い行列であった。


「待つのか?」


 わたしの問いにアリシアは沈黙で答える。要は迷っているのだ。


 ここはコインで決めよう。


 わたしは財布からコインを取り出すとアリシアを呼ぶが、十円玉の裏表がわからない。多分、建物の方が表のはず。どうする、携帯で調べるか?


 この一般常識としてのコインの裏表……。


 正に非国民で売国である。


 うううう、日本人として恥ずかしい。


「どうした?かつ丼食うか?」


 アリシアはそんなわたしを見て言うが今時の若い者にはわかるまい。ホント、要らぬ知識を覚えている。


 そうか!かつ丼を食べればいいのだ。


「アリシア、かつ丼を食べよう」

「はい?何を自白したい?」

「イヤ、だから、かつ丼を食べよう」

「私まで、かつ丼食うのか?」


 アリシアは自分で言っておいて、それはなかろう。


 待てよ???


 わたしはアリシアに十円玉の裏表がわからないと言ってみる。


「よーし、かつ丼にしよう」


 ややこしいが、十円玉の裏表がわからないと自白したのだ。そして、かつ丼が食べれる。とにかく、レストラン街に行ってかつ丼を探そう。それから、数件のレストランの中からかつ丼を探す。


「あった、かつ丼を売っている店だ!」


 結局、アリシアはかつ丼は食べずにカレーライスを注文する。相変わらずぬいぐるみの姿でガツガツ食べる。


 この世界のマギの流れがわかり始めてたので更に術式が活性化してぬいぐるみの姿で食事ができるとのこと。


 う……。


 ファーストフードの後のかつ丼は重い。やはり、銅ダコにすればよかった。

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