第10話 その百合

 昼休みに教室で自分の席に座っていると。夜葉が足音も無く近寄ってくる。


『ペロリ』


 それは首筋を夜葉に舐められたのだ。


 ひいいいい


 夜葉はヴァンパイアである。きっとこのまま血を吸われるのだ。しかし、夜葉の顔は耳に向かい。更に舐めてくる。これは性的欲求を感じる。


「あ、ぁ、止めて」


 思わず声が出てしまう。夜葉と目線が合うと不思議な気持ちになる。


 セメであるわたしがここまでウケで感じるなんて……。


「今日はこれで終わり」


 夜葉の言葉はわたしを落胆させた。それは、一晩中、夜葉を感じていたかったからだ。


『お願い、続けて……』


 わたしは本当に小さな声で夜葉を求める。


「ダメ、わたしは美味しい物は最後に取っておくの」


 そう言うと夜葉は隣に座る。いつの間にか午後の授業のすぐ前であった。


 ううううう、呪ってやる。


「わたしがウケなんてありえない。アリシア、特訓よ!」

「あい?」


 アリシアはぬいぐるみの姿でアホヅラしてこちらを見ている。普通の顔でも気分はアホヅラだ。


「今夜、わたしの耳を舐めて、あの夜葉に対抗する免疫を付けるのだ」

「はいはい、隠れテーマの百合なのね」


 と、言ってアリシアは授業が始まるので寝るのであった。



 

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