第8話 悪役!?
クラスがざわざわする。さて、総合学習の時間である。進学組は集中講義を行う。わたしはバカなので、選択はお菓子作りにした。調理実習室に何人かで向かい、エプロンをつける。材料を取り出して調理実習室でお菓子を作り始める。
「甘い香りがするな、何を作っているのだ?」
ぬいぐるみのアリシアはトローンした顔で尋ねてくる。貧乏令嬢には関係無いモノらしい。
「星形クッキーだよ」
そう、上機嫌でアリシアに答える。すると、わたしの黒い心がざわつく。
くくく、完成したらアリシアが欲しがるに違いない。
ワサビ入りのクッキーを混ぜて焼こう。
くくく……。
うん?急にお腹がゴロゴロする。冷えたのかな……?
少し席を外すと。
あれ?ワサビ入りのクッキーはどれだっけ?クッキーを焼く頃には混ざってしまった。
……。
美味しそうに焼きあがると。わたしは固まっていた。
「おぉ、これがクッキーなるモノか。当然、食べさせてくれるよな」
アリシアの言葉に適当な個数を渡す。ボリボリと食べ始めるアリシアは嬉しそうである。
わたしも一つ……。
ツーん、ワサビ入りだ。
一つ目にして当たりなのか、当たりなのか。
そして二つ目……。
ツーん。
オーブンで焼いても残るワサビの辛さに挫折感を得る。もう、嫌だ!
「アリシア、全部あげるよ」
確かワサビ入りは三つのはず。このまますべてあげてしまえば……。アリシアは嬉しそうに食べ始める。
「誰だ、わたしのクッキーにワサビを入れたのは?」
教卓に立つ家庭科教師が怒っている。どうやら、わたしの作ったワサビ入りのクッキーが先生の中に紛れ込んだらしい。
「犯人は停学処分だ!」
ヤバイ、バレたら死亡コースだ。
しかし、当たり前であるが、他にワサビ入りのクッキーが見つからない為にグダグダで終わるのであった。
ふう、命拾いした。
そして、その日の放課後。
ふー♪
ふー♪
グランドの先にある建物から吹奏楽の音が聴こえる。うんうん青春ですな。
しかし、わたしは楽器が使えないので羨ましい。
ふー♪
その音は単調であった。
あー簡単な音出しから始めるのか。何でも基礎は大事と言うことか。うん?アリシアは猫の姿で懐かしそうになっている。
「国立記念日に皇太子と始めてのデートでのこと。そうそう、国軍吹奏楽団のパレードが印象的であった」
は?
お金の為に皇太子に迫ったのではないのか?ここは素直に聞いてみよう。大体、極貧で皇太子妃を呪い殺そうとしたのに。純愛などあってはならない。
「金の為か?」
「何を言う、わたし達は愛し合っていたのだ。ただ、悪い虫が近づいてきたので簡単な呪いで払うとそれが陛下にバレて、二人だけで会うのが禁止されたのだよ。」
結局、悪役令嬢であったな。少し安心した。
「それで、あっという間に婚約になって。最終手段にでたのだ」
黒猫姿で異世界転生するような強力な呪いか……。ふー♪
「少し見学させてもらうか?」
「いいのか?」
「大丈夫さ、この高校はスポーツも盛んなので吹奏楽はケチではない」
ふー♪
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