第7話 日常と言う名のエピソード

 わたしは朝の支度を終え学校に行く瞬間である。


「この世界のマギの法則が解りつつある。つまりは高度な術式を使えるようになるぞ」


 朝から何を言い出すかと思えは呪いの成功率アップか。


「1日中、ぬいぐるみの姿でいられるのだ」


 前向きだな、喋る猫として飽きられたのに地味な姿で学校に行きたいとな。早速、術式を走らせて、ぬいぐるみになるアリシアであった。わたしがアリシアを放置して学校に向かおうと歩きだすと。


「こら、何故、わたしを放置して出掛けようする!」

「ついて来るの?」

「その為のぬいぐるみであろうが」


 わたしは渋々、アリシアをスクールバックにつけると登校するのであった。そして、いつも通り猫神様の前で休憩である。さて、自販機で缶コーヒーを買い、ぬるい缶を頬にあててまったりする。寒い季節にはこれだよな~。


……。


 何か忘れている気がするな。あ!数学の課題をこなすのを忘れた。


 待てよ……。


 わたしは術式を走らせてみる。数学のプリントに答えらしきモノが書かれる。


 せ、成功した。


 しかし、見たこともない記号が書かれている。数学の課題だ、難しい記号を使うのであろう。わたしは学校に向かって自転車で走りだす。それから、アリシアは昼寝である。ホントのんきな黒猫である。淡々と時間が過ぎて行き。問題の数学の時間である。課題のプリントを提出すると。


「夏樹、誰が、偏微分方程式を解けと言った」


 どうやら、問題じたい別物になっていたらしい。


「てへ、怒らないで、呪いをかけちゃうぞ」


 うー……。


 普通に怒られた。セクハラ問題として訴えてやる。あれ、違う、パワハラか?イジメ、やらせ?


 最近は似たような用語が沢山あるのでなかなか出てこない。


……。


 わたしは小首を傾げて考える。そうか体罰だ!


「夏樹、アホなこと考えてる暇があったら勉強をしろ」


 更に数学教師の雷が落ちる。


「おー、わたしがアホなことを妄想していることが分かったのか、これはテレパシーか」

「やっぱり、そうか、もう、席に戻れ」


 わたしはトボトボと歩いて席に戻るのであった。


*** 


 今日もアリシアに菓子パンを与える。黒猫の姿でもガツガツ食べる。話しによると猫は菓子パンを食べるらしい。つまりはアリシアにとって最大級のご馳走なのだ。


 試しに辛子明太子を与えてみた。


「ふ!ふ!辛いが美味だ」

「美味いか、ナデナデも追加してやるぞ」


 わたしはアリシアの頭をナデナデする。


「そうか、わたしが可愛いか、猫の姿でも出ているオーラが違うからな」


 ま、ペットとして可愛いのだが、これは黙っておこう。


 そうだ!酒はどうだろう?


 しかし、十五歳の女子には不味いか……。


 だが、今は黒猫の姿だ、ケチケチせずに与えるか?アリシアにお酒は飲めるのか聞いてみる。


「お酒?年に一度の収穫祭に市民から貰うお酒を両親が少し飲むだけだ」

「かなり少量なのか?」

「そうだ、一般には普及しているお酒も貴重品なのだ」


 ホント貧乏だな。


 何度も言うが皇太子妃の座を取られて危険な呪いを使った気持ちがわかる。


 黒猫姿の毛並が凄くいいのだ。


 異世界転生して幸せなのだろう。


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