第3話 満月には気を付けろ

 

 数日後、満月の夜の事である。月光が部屋の中に差し込み神秘的な雰囲気であった。わたしは自室で寝ようと支度をしていると。


 闇夜を照らす月灯がアリシアに降り注ぐと……。


「にゃんですと!」


 何を騒いているのかとアリシアに近づくと。裸の女性が現れる。その姿は金髪で長くて光沢があり、大き目の形の良いバスト、肌は白く透き通る様で、丸みをおびたヒップは女性らしく美しい。そして、顔はおしとやかで美人である。アリシアが失敗した呪いの成果である黒猫化が満月で解けたのだ。なんだ!この美少女はこれで伯爵令嬢なのか!これで貧乏でなかったら油性ペンキで白猫にしてしまうところだ。とにかく、裸では不味い、わたしはサブのパジャマを与える。


「これ、胸がキツイぞ」


 落ち着け!お約束のパターンだ。


「なんだ、わたしの美ぼうに酔いしれているのか?」


 うむ、問題ない。猫神様の前に捨てるエンドになる可能性が増しただけだ。よく見ると頬に猫髭が生えている。これは朗報である。美少女とはいえ、頬に猫髭とはまさに間抜け。わたしは猫娘のアリシアを見て我を取り戻すのであった。色々混乱したが、あわゆく、バッドがあったら手っ取り早く、殴っているところだった。


「こんな、夜中に元の姿に戻っても意味がないな」


 そう言うとアリシアはいつも寝ているベッドの隅に向かう。わたしもブツブツ言っていても仕方がない。寝るかと思うとアリシアが女性化してベッドが、せ、狭い……。


 しかし、満月に呪いが解けるとか、ホントに悪役令嬢なのか?だいたい、満月など何度もくるであろう。満月の日を携帯で調べて。バット……ではなくて着る服の用意をせねば。


 朝、目が覚めるとアリシアは元の黒猫に戻っていた。


***


 翌日、下校時間になり、アリシアは術式使い、ぬいぐるみの姿になる。生の黒猫スクールバックに入れるのが邪魔と感じてアリシアに頼んだのだ。


「この娘、わたしが大地主の家系である事を忘れているのか?」

「はい、はい、固定資産税で極貧になるのですね」

「うぅぅ……」


 アリシアは固まり、どうやら、極貧の家系に生まれた事を呪っている様子。


「それから、『この娘』扱いは止めて、夏樹と呼んで下さいね」


 わたしの言葉にジト目になり不機嫌である。メイドが五人いたのだ、少々の上から目線は我慢しよう。そして、帰宅途中の猫神様の前に着くとやはり、術式が解けて黒猫になる。


「マギか……」


 黒猫姿のアリシアがポツリと呟く。この猫神様はマギが関係しているらしい。わたしは仕方なく、黒猫になったアリシアをスクールバックにつめて猫神様の社の隣にある、自販機の前に座る。


 通学中の至福の一杯だ。


「コラ、わたしをバックの中につめて、まったりとするな」


 面倒だな、ここは非常食の魚肉ソーセージをアリシアに与える事にした。アリシアは一口、魚肉ソーセージを食べると……。涙をこぼしてガツガツと食べ始める。


「美味い、これ、マジで美味い」


 さいですか。


 わたしが缶コーヒーを飲み乾すと、アリシアは魚肉ソーセージを丁度食べ終わっていた。仕方ない。また、アリシアをスクールバックにつめ込んで出発である。


***


 アリシアが元の姿に戻った時に為に服を買いにきていた。


 場所は総合スーパーです。スーパー内でアリシアが黒猫では不味いのでぬいぐるみの姿であった。


 先ずは下着だ。えーと、ブラはノンワイヤーのMサイズでパンツは適当でいいや。


「色はこだわらなくいいのか?」


 アリシアが尋ねてくる。贅沢な猫だ、満月だけの美少女化なのに……。


 仕方ない、アリシアに色を選ばせる。


「このヒモみたいなパンツはダメか?」


 今どきにTバックか?わたしに欲情したのか?ここははっきりダメと言おう。


「ケチ……」


 結局、下着は水色系で統一した。


 次はパジャマだ。


 アリシアは薄紅色のパジャマを指さす。だから、子供向けのパジャマを選んでどうする。アリシアの本来の姿は美しく、嫉妬の対象である、ここは男物を推薦するのであった。


「嫌だ、わたしはこのシルクのパジャマが良い」

「……」


 この娘、人の姿になった時に、やはりわたしに欲情したな。


 わたしは仕方なくシルクのパジャマを買う事にした。かなりお金がかかった。


 これで百合展開なら困ったものだ。

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