第2話 チャーハンと唐揚げ

 わたしは、りょう君と動画を繋ぎながら一緒に食事をする約束をしてしまった。


 お見舞いの帰り、電車の中で片っ端からレシピアプリを入れまくった。


 作り方を見ているとどれも美味しそうでお腹がすいてくる。


『いつもお惣菜だと流石に料理できない女だってバレちゃうよね。頑張らないと!』


 家に帰る前に百均にも行って、調理器具も手当たり次第購入した。


……


 今日は休み。


 朝のランニングを終えて、さっとシャワーをしてから、りょう君に連絡をしているのに、全然起きてくれない。


『あんまり連絡しすぎてもウザがられるのも嫌だなぁ。でも十一時過ぎてるじゃん』


 もう三回もかけてしまったから四回目をどうしようか考えてたら亮君から連絡がきた。


「今日のお昼ご飯は何にするの?」


「いきなりそれはないだろっ? おはよう。とか言えないのかよっ!」


『あ、しまった! そればっかり気になってたから、いきなり聞いちゃった』


「だってぇ、りょう君がなに食べるか決めてからじゃないと、わたしは用意できないんだからね~っ!」


『まだ料理も上手くできないし』


「あぁ、まあ、そうなんだけどさ~。今起きたばかりだし、ちょっと待ってくれよ」


「買い物行くのも面倒くさいから、昼はチャーハンと唐揚げにしようかな」


『亮君二品はきついよ~』


「オッケー。じゃあ、わたしは買い物行ってくる! またあとで連絡するねっ」


『ヤバい早く買い物いかないと! あ、その前に冷蔵庫確認だ!』


 冷蔵庫を確認したらしらすとたまごがあった。いつもご飯に混ぜて食べるだけ用。あとはレタスと冷凍ネギ。


 わたしはアプリでレシピを探す。


【しらす チャーハン】


 あ、これなら美味しそうだし、簡単っぽい。


 しらすとカニかまの海鮮チャーハン。コスパもいいし、レタスもあったし。包丁も使わなくてすみそう!


 あっ、味変もできるんだ。鶏ガラスープの素と卵白で片栗粉でとろみつけるだけならこれも簡単そう!


「あとは唐揚げだよね。【唐揚げ 中華風】で検索してみよっ!」


 わたしはテンパりすぎてひとりごと状態になる。


【唐揚げ 中華風】


「これなんて読むんだろ?油淋鶏?」


「へぇ、ユーリンチーっていうんだ」


「油少なめだし、タレも電子レンジで作れちゃうならできそう。あ、片栗粉なら一石二鳥だね」


「よし、スーパー行こ!」


 わたしはスーパーで【カニかま、片栗粉、鶏ガラスープの素、鶏肉二分の一枚、チューブ生姜】を買って急いで戻る。


 さあ、戦闘の時間だ!


 レシピを見ながら、醤油、砂糖、酢、水、生姜、ネギを混ぜて電子レンジで加熱したらタレは完成する。


 次に鶏肉に塩コショウして、片栗粉をまぶす。キッチンは粉まみれになって真っ白状態。


「コホッコホッ、やっちゃったなあ」


 小さな鍋に少なめの油を入れて、鶏肉を投入。


 チャーハンの下ごしらえは、カニかまとレタスを手でちぎる。

 たまごはザルに割って卵白とわける。黄身はご飯に混ぜておく。


 鶏肉がいい感じだからそっと裏返したら油がはねた。


「キャッ」


 危ない! 間一髪で火傷はしなかった。


 さあ、チャーハンだ。


 フライパンにご飯を投入して塩コショウをして炒める。そこにしらすとカニかま、レタスとネギを投入してまた炒める。


 混ざったらだしの素とゴマ油を少しいれたら完成だ。


 そのままの流れで鶏肉を油から上げる。


 チャーハンは一度お椀に入れて丸くしてから、平らなお皿にくるっと落とした。


 お水を沸騰させて鶏ガラスープの素、塩コショウ、砂糖を少しいれる。水溶き片栗粉でとろみをつけて、最後に卵白を投入して、少しゴマ油を垂らして完成。


 よし、今日はいい感じ!


 キッチンは粉まみれ、コンロは油まみれだけど……


 さあ、亮君に連絡だ。


「お、おい、それなんだよっ!」


「なにって、チャーハンだよ。しらすとカニかまの海鮮チャーハン」


『亮君が食べたそうな顔をしてくれてる! 大成功だねっ』


「黄色いのはわかるけど、その緑色のは何?」


「あ~緑色のはレタスとネギだよ」


「りりに似合わず、健康的そうなチャーハンだな」


「どういう意味よっ! しらすが安かったし、ネギとレタスは残ってたやつだしね」


『しらすは貯め買いだし、チャーシュー高い』


「あれ、唐揚げは?」


「唐揚げはこれよ」


「それ唐揚げなのか?」


「油淋鶏よ」


「ユー、リン、チー?」


『亮君いい反応してくれてる! さっき名前知ったばかりだけどね』


「唐揚げよりも油使わないし、片付けも楽なんだよね~」


『そう書いてあったよ。コンロ油まみれだけどね』


「そ、そうなんだ」


「うんっ! じゃあ~、一緒に~」


「「いただきますっ!」」


 二人ともスプーンを手にもつ。

 亮君は先には食べず、いつもわたしの食べているところをまず見る。


「お、いい感じにパサパサしてる。ゴマ油の香りが食欲誘う感じ~」


『ハフッ』


「しらすの塩っけと、レタスのシャキシャキがいいっ。隠し味にだしの素は正解だったみたいね、味に重なりが生まれてるっ」


「ホントに美味しそうに食べるよな」


「だってぇ、美味しいんだもんっ!」


『うん、ほんとに大成功っ!』


『ハフッ』


「あ、ネギのところも食感と味がまとまってるね。カニかまもいい役割してるなぁ」


「りり見てたらお腹すいてきたよ、おれも食べよう」


「りょう君のは、ソーセージとたまごとネギ?」


『亮君も頑張って料理してくれたんだね』


「お、おう、あとたまねぎもいれたぞ」


「すごいじゃん、シャキシャキ感と甘味出るからいいよねっ!」


『玉ねぎは食感も甘みもすきなんだよね~』


「だろ!」


「うんうん、美味しそうだねっ! でも私も裏技あるんだよ~っ! ちょっと待っててね」


『亮君驚いてくれるかな?』


 わたしはキッチンにお椀を取りに行き、チャーハンにドロドロした餡をかけた。


「ほらぁ、見て見てっ、餡かけチャーハンだよっ」


『ハフッ』


「鶏ガラとたまごの白みが和風チャーハンを一気に中華風に変えたぁ」

ほっぺたに手がいっちゃう。


「そんな味変とか卑怯だろ~っ」


『めちゃくちゃ美味しいっ』


「別に戦いじゃないんだからねっ。そんなに食べたいなら、今度りょう君のとこ行ったとき、作ってあげるよっ」


『もっと練習してちゃんと散らからないようにもしないとだけど』


「おぅ、ありがとう」


「さあ、中華風に変わったところでユーリンチーいただきますっ」

わたしはスプーンから箸に持ちかえる。


『サクッ』


「鶏肉がパリパリジューシーで、そこにネギだれの酸味と生姜が、口の中をすっきり爽やかにさせるぅっ!う~ん、これは相性いいねっ」


『これはタレも簡単だったからリピートありだねっ。あ、油だけ気をつけないと!』


「りょう君のはどこの唐揚げ?」


「○○食品の冷凍だよ」


「あ~あそこのやつは、隠し味に生姜とニンニク入ってて美味しいよね」


『わたしがいつも休み前に食べてるのと一緒だ』


「そうなんだよっ。これ美味しいよな?」


「うんうん、美味しいよ~」


……


「今日も美味しかったね~」


「「ごちそうさまでしたっ!」」

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