最後の曲は

たい焼きマシン

第1話 夢は、突然に終わりを告げた。

「じゃあ先輩、俺今日はこの辺で帰ります。お疲れ様でした!」


いつも通りのスタジオ、いつも通りのメンバー。


今日も俺、奈図なず千広ちひろは部活をしていた。

部員が三人しかおらず、正式には同好会なのだが俺は部活と呼んでいる。


きっと来年度にはメンバーが四人以上になって、正式に部活として認められるだろう。


スタジオを後にして、2月の雪道を歩く。


なぜ、わざわざスタジオを借りて活動をしているのかという疑問が浮かんだ人がいると思うので、その説明も行っておこう。


理由は二つある。

一つ目は、先程言った部員の数の問題だ。

俺が通っている神崎かんざき高校こうこうでは、部員四名と顧問の先生がいないと部として認められない。


そのため、部員が三名で、顧問のいない俺たちは部として認めてもらえず、部室が用意されていないのだ。


二つ目の理由は、部員の一人である桐生きりゅうのぼるの父が、そのスタジオの運営会社の社長をやっており、無料で借りさせてもらえるという点だ。


普通なら、学生が学校帰りに毎日スタジオを借りれる金なんてない。

だが幸運なことに、桐生のお父さんのおかげで、それが実現できている。


とは言っても、ボーカルとギターとドラムだけではやはり、クオリティに限界がある。ギタリストがもう一人、そしてベーシストも一人欲しい。その二つは、来年度の新入生に期待したい。


そんなことを考えながら歩いていると突然、制服のポッケに入れてある携帯がバイブし始めた。


ポッケから取り出し画面を確認してみると、着信だった。相手は母親である。


画面をタッチして電話に応答する。


「もしもし、どうかした?俺、今帰り道だけど」


「もしもしッ…!!お父さんが…!!」


母の声は、これまでにないほど焦りに満ちていた。


「父さんがどうしたんだよ…?」


俺も少し不安を感じながらそう言った。


「お父さんが、…!!」


「ッ…!」


俺は、あまりの衝撃に声が漏れた。

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最後の曲は たい焼きマシン @ZZZ___

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