第二十羽 おっさん、依頼達成する。

書類に押印して話し合いもスムーズにいき、更に村に協力する体制も整ったわ。

「ありがとうごぜーますだー。おかげさんで無事出荷できますだ」

「こっちも報酬しっかり貰えそうだし良かった」

うちのベリルたんが喜んでおりますありがとうございます。肩が果汁でべちょっとしてるけど洗えばいいのよ!

依頼達成のサインももらったしギルマスと眼鏡のお兄さんと共に町へ戻ることになったんだけど。

やたらギルマスがため息ついてんのなんでなの?

「お前さんは一般的な冒険者かと思ってたんだがなぁ」

いやごく一般的な中堅冒険者だと思ってますけどなにか。

「そうですね~」

お兄さんまで同調して眼鏡をくいっと上げて頷くなんて、あたしには訳が分からないのでひょいと肩をすくめるだけで流しといたわ。


「意思疎通できる高レベル魔物と渡り合うって一般的じゃねえよなあ」

「そうですね~」

「相棒の方も喋りこそしねえがほぼこっちの言ってることわかってるふうじゃねえか?」

「そうですね~」

「なのに自覚がないと来た。規格外の自覚があって野心がありゃあ上り詰めそうなもんをよぉ」

「そうですね~」

ちらちらこっち見んなし。聞いてないったら聞いてないのよ。あたしは理想のカップル愛でるために永遠の中堅冒険者として平穏にやってくの。

ラブラブカップルのイチャイチャを遠くから眺めて、ふわもふの相棒を愛でて、堅実に仕事をこなして生きるのよッ!それこそあたしの思い通りの生き方スローライフ。その為には余分な仕事も余分な騒動もノーサンキューなんだからねっ!


街に戻るとやっぱり昇格の打診されたけと思い切り蹴飛ばしてやったわ。ベリルはちょっと残念そうだったけど…急いで上げなくてもいいじゃない。緊急時に参戦できるランクには届いてるんだもの。それに下手に高ランク入りすると余計な呼び出しで面倒になるって聞いて知ってるのよ〜。ついでにそろそろ旅に出るって伝えといたわよ。依頼達成の報酬に果物と多少の金銭を頂いて、貯金と合わせて収納袋もゲットしたわ。もう準備は万端よ!


ギルマスと眼鏡のお兄さんがもっとくっついててくれたらまだしばらく居たかもしれないけど。ガードが固くて愛でる隙がなかったのよねー。お兄さん×ギルマスなら余裕で推せると思ったのになぁー。うふふ…お兄さんにばっちり睨まれちゃった☆あたしはラブラブな二人を眺めるだけで幸せになれる傍観者だから大丈夫なのにねぇ。嫉妬ウマウマごちっす。これで次の街までご飯イケますわー。あざまっす!


「ピヨ〜?」

「んーそうねぇ、次は学問の街って有名なとこ目指してみようかしら。薬草の扱いを覚えてみたいし」

ここより都会な街で人も多い場所って聞いてるわ。学ぶことが好きな人が作った街で、はじめは何にもなかったけど今では図書館やら学園やらあるらしいの。ふふ、そこならあたし好みのカップルに会えそうじゃない?

「楽しみだわ〜」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モブおっさんは傍観者を気取りたい。 翔馬 @nyumnyum

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ