第十九羽 おっさん、害を益に変える。
「…死ヌコトヨリ」
「引キ離サレル方ガ辛イ」
「そう。じゃあ誓約するのね」
カブトムシとクワガタは手(?)に手を取り合いあたしの方を向いて頷いたわ。どこに目があるかわからんけど。あと今のはちょっとだけときめいたわ!やっぱり愛し合うカップルが最高よねッ。
「よっしゃ。んじゃギルドで話を通したらサインを、足型かしら、押印してもらうわね。少し待ってて頂戴。くれぐれも暴れないように!」
「了解シタ」
てなわけであたしとベリルは急いで村に戻って事情を伝えギルドに連絡人を走らせたわ。一応見張りに残らないといけないからねー。こういうときスマホがあれば便利なんだけど。前世を思い出すまでは考えもしなかったわね〜。魔導具とかで通信ってないかしら…いやあったわ。ギルドなどの大きな施設には緊急時のみ使える水晶玉みたいなのがあって、テレビ通話みたいなことができるって。冒険者登録のときに一回しか聞いてないからすっかり忘れてたわ。でも個人で持てるのはそれこそ特級冒険者くらいだわね。縁のない話だわ〜。
追加の虫除け剤を作りながら待つこと二日。村人は健脚だけど冒険者じゃないから丸一日かかったみたいね。そしてギルド員の足では半日ほど。細身のお兄さんとギルマスがやってきたわ。
「魔蟲を説得したって?」
「話が通じる相手だったんで、な」
お兄さんはメガネをくいっと上げてにこにこしてギルマスは深いため息をついてスキンヘッドの後ろを掻いてるわね。討伐じゃないと不味かったかしらん。でも書類も用意してきてるみたいだしいいのよね?ね?
村で再会して話しながら頂上へ向かってるの。書類はお兄さんがケースに入れて持ってるわ。ギルマスは一応武器として大剣を担いでるわね。いわゆる西洋の斬るっていうより叩き潰すみたいなアレよ。すんごい重そうなんだけど大柄な体格に見合った力持ちね!軽々担いだまま登山してるわ。
「来タカ」
「待ッテイタ」
「ああ。こっちのギルマスと話し合って押印してくれ」
「…ワカッタ」
「あーまじで話してやがる。こいつらAランクじゃねえか…」
「念のため最大効果の書類用意して良かったですねギルマス」
話ができる魔物って高ランクだったらしいわ。忘れてたって思わず呟いたらギルマスにこめかみグリグリやられたわ。正直すまんかった。
押印まではスムーズに行って、あとは住処どうするって聞いたらカブトムシとクワガタはあたしを見て。相変わらず目がどこかわかんないケド。
「世話ニナッタ」
「ワタシタチハ虫統率スキルアル」
「詫ビニ村守ル」
「おう。じゃああれだ果樹園も守ってもらえば害虫どころか益虫になるんじゃないか?」
「それはいいですね。更に守りを固めるとすれば少々の子作りも認められると思います」
「…!」
「コウスレバイイノカ…」
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