第十八羽 おっさん、仲を取り持つ。

ロミジュリしちゃってるカブトムシとクワガタが元凶だったらしいわ。腐界を生きたあたしでも受け入れられないものってあるもので、ちょっと流石に虫が虫のままでは萌えられなかったわ!擬人化してたらアリかも知れなかったけどね。とはいえあたしはびーえ○を愛する乙女…いやいやオトメン、このまま亡きものにというのも忍びないわ。どうするのがお互いに最良か。うーーん …人に害を与えるてんとう虫擬きが量産されなければひっそり愛を育むくらいは全然問題ないと思うんだけど。せっかく二人の愛の結晶が生まれる世界なのに残念だけどね?


「…あんたたちさ、子供は欲しいの?こんな風に戦わせるために産み出すだけなら子作りはしなくてもいいんじゃないの」

「ソレハ子供デハナイ。分身ノヨウナモノダ」

「こういう被害を出さないなら人間積極的に討伐しないと思うわよ」

「…本当二?」

「人自体や農作物とかに影響なければやるのは虫除けくらいね」


実家の農家での仕事を思い出す。虫害がある場合その虫を取り払うか虫除けを撒くか、そんなもので大規模な被害でなければ殺虫剤など使っていなかった。まあうちは小さなところだからかもしれないけど、二番目の兄の婿入り先でも似たようなものだったわ。恐らくこの世界ではそこまで虫害って無いのよね。今回が特殊なんだと思うの。虫を餌とするベリルを見込んでの依頼だったんだもの。一応ギルマスに報告はするけどさ。大丈夫だろうと思うのよね。


「障害を乗り越えて手に入れる愛は尊い。けれどまわりをすべて壊して受け入れられたって言うのはなんか違うって思うのよ?まわりが間違ってるか二人が間違ってるか主観ではわからないこともあるからね」

悲劇のヒロイン気取りほどイタイもんはないっていうし。

「……」

「少なくともあたしが受けた依頼内容はであって、ではないもの」

「害虫」

献上品に傷がついてまともに出荷出来ないんだから今の時点では害虫よね。

「で、まあ、実害及ぼしてた分身体?は討伐したんだから、あんたたちがこれ以上被害を出さないって誓約できるならここで終わりにできるわ。どうかしら」


誓約っていうのはここでは魔法的縛りのある誓約書に同意のサインをするってこと。破ったときのペナルティーはそれぞれ書類を作るときの話し合いで決められるの。聞いた中で一番重いのは消滅だと思うわ。普通に死ぬのでなく存在した事自体が消えるらしいから恐ろしいわよね。生きてきたすべてが無かったことになるから誰からも思い出されず記録も消えてしまうのですって。だから相当な覚悟がいることではあるの。

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