第十七羽 おっさん、元凶と対峙する。

材料があったぶんだけ除虫薬を作って果樹の周りに撒き終わると祝宴じゃああ、とばかりに歓待しようとするのを遠慮して軽く休憩だけさせてもらうことにしたわ。最近は虫のせいで村人たちも疲れてるでしょうからね。もちろん気持ちが明るくなったのは良いことよ。だからささやかな晩餐は一緒に頂いたの。果実をうまく活用した料理はなかなかに美味しくてあたしでもできそうなものは教えてもらったのよ。うふふ、今度作るのが楽しみだわ!

で、村長の家の一部屋を借りて仮眠を取ったあと。


「ベリルは本当に賢いわね〜!」


匂い、か何かを辿るベリルについて更に山を歩いてるわなう。


「ピィ」


胸を張って転びそうになって慌ててごまかすベリルたん萌え。

丸いもふもふが揺れる後ろ姿を愛でながら歩くこと体感三十分くらい?山のてっぺんのハゲた部分につくとそこにはびっしりとヤツらが…!

「げぇ…まじか」

全身震え上がったわ!あの果樹園にいたのなんてほんの一部だったのね。だけどここは守るべき果樹も村人もいないからこっちも気にせず斬れるわね。

「んじゃいくわよベリル!」

「ピピィ!」

そこからは滅多斬りの嵐よ。こいつらだって嫌がらせではなく生きるために食べれるもん食べてるだけなんだろうけど、こっちだって死活問題なんだからね。襲ってくるてんとう虫擬きを斬り払い踏みつぶし手甲で叩き落とし踏みつぶし蹴り落とし踏みつぶし踏みつぶし踏みつぶし…。キリがないわ!

「こういうときこそ広範囲に効く魔法なのにッ、なんで、あたし、魔法の才能ッ、無いのかしらねッ!」

「ピィ~」

ふわもふのあたしの相棒ベリルは呆れたように相槌打ちながらてんとう虫擬きを蹴爪で蹴り倒し嘴でどつきまわしている。危なげなくてほんとに頼もしいわ。ちゃんと話に付き合ってくれるところも素敵。背中合わせに蹴り飛ばし入れ換わって斬り払いするあたしの頭上からの敵にも飛び掛かり連携に隙もない。正直あたし一人なら手が足りなくてソッコー詰んでたわねコレ。


しばらく続いた対物量戦だけどさすがに目に見えて数が減った頃、中央に一際でかく黒々したGもどk…いえ、

「なんっでカブトムシとクワガタがつがってんのよ!?いやワタシタチハムスバレナイウンメイトゥンク、とかしないからねええええ!!」

何故かカブトムシとクワガタが真っ最中で。こいつらが産み出してたんかい!


カブトとクワガタの羽音というか唸るような声?がなんか頭に直接響いてきてビビるんですけどオオオ!流石に虫×虫は無理ムリムリッ!


「ヤハリウケイレラレナイノカ…」

「あー…申し訳無いけど無理…」

「デハコノママ世界ヲワガ子ラデ埋メ尽クシ支配スルコトニ」

「イヤイヤイヤそれこそ駄目だからあああああ!?」

ていうかこの世界虫のオス同士でも子供出来んのネ!ファンタジーにも程があるわ!

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