第十四羽 おっさん、差し入れする。

収納袋にはいくらいれても重さは一緒、というか重くならないの。便利よねー。一応これは容量制限あるのだけど、遺跡から発見されたのは無限収納らしいわよ。冒険者がギルドで借りられるのは一定容量までだけど重さはずっと軽いの。料金もお安くなってるわ。依頼の度に借りるか、月に一度の支払いでしばらく使わせてもらうかね。あたしはしばらく借りてる方。でも今日ベリルたんの協力でかなり獲物を狩ってるからそろそろ買い上げ考えた方がいいのかも。一年の支払い額くらいで中古のは買える筈だし。


なんて思いつつ歩いてたら村の入り口まで来ていたわ。門番らしい若者が立ってるんだけどなんだかげっそりして見えるわ。大丈夫なのかしら。

「あー、こんにちは?依頼の件できたんだが…ずいぶん疲れているようだな」

「う、ああ、冒険者か。虫のせいで収穫ができなくてな…情けないことに腹が減って」

おっさんちょうど熊を持ってます。二頭も狩ったんだから一頭ぐらいあげてもいいよね?足元の鶏と目を合わせると頷くようにくちばしをつき出す。よし。

「来る途中で熊を狩ったのだが良ければ差し入れよう」

「本当か!?ありがたい!」

若者は大喜びで村に入れてくれたわ。


なんか虫退治の前に宴会の様相よ。でもまあ腹が減っては戦もできぬ、だわね。村の住人は三十人程度、熊はみんなで鍋で美味しくいただいたの。熊がでかくて良かったわ。濃厚な脂の旨味でパンも進んだわー。

「ありがとうごぜえますじゃ、虫退治の依頼ですじゃのに熊をいただいてしまい申し訳ねえですじゃー」

「いや、依頼を受ける以前にあんたがたが餓死しちゃあ意味ねえだろう」

「ありがたやーありがたやー」


腹の虫の方を駆逐した後は果物狙ってる虫の方ね。話を聞くと果物は葡萄に似たものね。狙ってきてるのはてんとう虫に似たやつ、らしいわ。飛ぶやつね。

てんとう虫に似てるのは丸っこい甲虫ってとこ。だけどこいつは葡萄に似た実だけじゃなくて木の幹までかじってるんですって。このままだと今年の収穫どころか村が滅ぶわよ!

徹底的に殲滅しないとね。あとまた狙われないように対策もしないとよね。見張りをおいて追い払うのはもうやってて、それもあって若者は疲れていたみたい。てんとう虫が嫌がるものを撒くとかかしら。それか田んぼの合鴨農法みたいに従魔を配置するとか?

「ピイ」

まだ見ぬご飯に気合いを見せるベリルを肩に乗せて、とりあえず今集ってるやつを退治してから考えましょうかと村長の案内で果樹園に行ってみることにしたわ。

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