第十三羽 おっさん、山に登る。

「あ゛~しんど…」

「ピヨ」

「あんたは歩いてないでしょー」

「ピッピー」

「…口笛かよっ」


早朝から登山中のおっさんよ。

ベリルたんはあたしの頭に乗っかっておサボりよアイタッ、つつかないでよー。別に責めてる訳じゃなくてただの事実よ!

思ったより標高が高くてきつめの登山だったわ。防寒具や登山向きの靴に食糧としっかり準備してきたのは良かったんだけどこんな高山で活動するのは慣れてないからね。ゆっくり慎重に登ってるの。それでもなかなかしんどいわ。


「ふー…ちょっと休憩。あら、これはバレイショ茸ね」

切り株を見つけて座ったらひょろっと細長いきのこがあったわ。ラッキーね。数がとれれば売るのもいいけど…美味しいのよこれ。一本だけだから食べちゃいましょ。ちょうどお昼だし。根本から折り取ったきのこは軽く汚れを拭いたら刻んで細かくして鍋にいれて火を通しながら混ぜていくと、粘りが出てくる。そこに調味料になる木の実をぽいっと追加して混ぜる。これだけでも美味しいけどとうもろこしの粉を練って焼いたパンに乗せて食べると。


「んん、んまい!」


本当はご飯にのせるのが一番美味しいと思うんだけど、まだ米を見たことがないのよねー。うーんよくあるのは動物の飼料になってるパターンだけど、馬に食べさせてるのは飼葉だった気がするわ。まあ気長に探してみようかしらね。

頭から降りたベリルは興味がないみたいで木の根本をつついてるわ。

鶏には炊いたご飯ってダメらしいのよね。生米はイケるんだったかしら。まあベリルは魔物だから平気かもだけどね。とりあえず木の実を砕いて細かくしたのを食べさせてるわ。でもこういう山とかでは地面をつついて自力で栄養とってるわね。街中ではあまりいいものがないみたいで買い物中もほとんどあたしの頭の上で寝てたわね。けっこう動いてるのに落ちないんだもの。器用ねえって感心しちゃったわよ。


ゆっくり食べて、白湯をいただく間にひとつ二つ野草も見つけて採取したわ。花びらがポーションの材料になるやつとかね。

「そろそろ行くわよベリル」

「ピヨッ」

「あらここからは歩くの?」

「ピ」

「じゃあ野草見つけたら教えてね」

「ピィ」

この子ったらあたしが持ってる野草図鑑見て覚えちゃったのよ!?マジで特殊固体の可能性が高いわよね。バレないようにするか…激強に進化させるか、ね。ベリルたん賢いうえに、ちょっと好戦的なのよね…。

ああまた熊に喧嘩売ってるわ。


「ピピィッ!」

「ギャアオォォ」

助走をつけて駆けていき途中の木に爪を立てて上るとそのまま熊の眉間に舞い降りてズダダダッ、と蹴りをお見舞いする。爪が…けっこう鋭くてね、刺さってるわね、あれ…。ああ血が、ピューッと。

「グア、ア、オ」

「もー、仕方ないわ、ねっ」

熊の背後に回りこんでとどめをさしたわ。それを見て胸をふっくらさせて満足そうなうちのベリルたんかわゆす。を収納袋にいれてまた村に向けて歩き始めながら、勝ち気な鶏もまたかわいいとあたしも満足よ。

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