第十羽 おっさん、報酬を話し合う。

ギルドの大きくどっしりとした扉を開けると中にいたものが一斉にこちらを見て値踏みする…なんてテンプレは起こらないわ。明るく広いフロアーに小綺麗な職員がカウンターの中に立ち働いていて、来客時にはようこそ冒険者ギルドへ!っと声を揃える。組織としてギルドは受け付けに接客をしっかり学ばせているのよ。


「ようこそ、当冒険者ギルドへ!本日はどのようなご用でしょうか?」

「こんにちは。先程街門に出現した魔物をこちらの方ともう一方で討伐されましたのでギルドを通して警備担当より報酬を出したいのです」

「当方でも避難された方からその件は聞き及んでおります。少し前にその後発で参戦された方もいらっしゃいましたので、こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」


入ってすぐに目があった細身のお兄さんが案内してくれたわ。受け付け脇のドアから奥の廊下に抜けて右の部屋が応接間のようね。あたしみたいな木っ端冒険者じゃ縁がないけれど。

「失礼します。警備責任者の方ともうお一方をお連れしました」

お兄さんが声をかけると中から返事がありドアが大きく開いた。

「どうぞお入り下さい」

会釈してあたしたちが入室するとお兄さんはドアを閉めて戻っていったわ。


室内にはさっき見た斧持ちの逞しい男と更に逞しい大柄な男が対面でソファに座っていた。

「さっきはどうも」

「おう。まずは座れ。あー…そっちのソファを使ってくれ」

「…はい」

うん。ギルマスらしき大柄な男が座ってるの以外は三四人並んで座れる横幅あるソファなんだけど、斧の男が座ってるソファにはその…貴族男性が寝ているのよね…。なので、もう一つ空いてるソファに座るしかないの。

ていうかそれ、膝枕よね!?思わず目を皿にして見ちゃうわよ!ああんありがとうございます眼福〜!


「そんじゃ報酬についてだ」

「警備としては民の避難の助けとして魔物討伐を依頼した形にして報酬金を支払いたいと思います」

「お前らそれでいいか」

あたしは斧の男と顔を見合わせて頷いたわ。特に不満もないしね。カエルゾンビにドロップアイテムもなかったのよ。だからお金がもらえるならそれでいいって感じ。

「受け取りは…まあ後日入金だな。お前ら口座はあるな?」

「ある」

「ならあとは分配か。そっちの剣士がほとんど倒したとぁ聞いたが」

「ああ、俺の方は一割でいい」

「いや、それは」


それあたしが九割貰うってことよね、さすがに多すぎるわよ!?と言おうとしたんだけど。

「俺は運命と出会えたからな」

寝ている男性の髪を包帯の巻かれてるとこを避けて撫でながらとっても幸せそうにはにかむんですもの。なにも言えなかったわ。手当ては終わってるようで安らかな…顔は斧の男の腹に向いてるから見えないけど雰囲気がリラックスして見えるのよ。思いっきりガン見しましたけど?

「…おめでとう」

「ああ」

「おめでとうございます」

もう見たまんま幸せそうなのでギルマスも警備兵さんも納得って訳。あっさりと話し合いは終わったわ。

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