第八羽 おっさん、戦闘する。

油断なく構えたまま視線を走らせる。後方には民衆だが兵士たちが守って誘導中。時間稼ぎでもできれば応援を呼んでくれるだろう。…呼んでね?前方正面にはカエルゾンビ。なんと一匹でなく仲間らしきカエル崩れが五、六匹続いて跳ねてきている。左斜め前方に大破している馬車。恐らく中には人がいる。さっきの呻き声が人間なら救助が必要だ。


「っち」

前触れなく飛んできた一匹を剣で撫で斬りし、そのまま右斜めへ振り払う。今のとこそっちには街も人もないからね!

警戒してちょい離れた場所から舌を鋭く早く伸ばす一撃が飛んできて自分は顔をそらして避けたがチャボが突き落とされた。

「チャボっ」

「ピピ!」

元気な返事が返りホッとする。敵から目を離さないようにしつつ横目で確認すると少し後ろに落ちたが羽を広げてゲシゲシと足で地を蹴ってる。臨戦態勢のようだ。ちっこいから威嚇してても怖くないが。


あと六匹。前衛二中衛三後衛一に並んで中腰でこっちをにらんでるように見える。目玉は流れちゃってるんだけど。ヘイトは俺たちに向いてるから、検閲に並んでた一般人は逃げおおせたらしい。

注意を引かないように気を付けながらも兵士がくれた合図に軽く手を振る。

うん、幸か不幸かこの列に冒険者はあたしだけだったらしい。兵士って何だかんだ魔物相手ってあんまり慣れてないからね。人相手の方がお得意なのよ。お陰で避難はできたみたいだし、あとはあの馬車から離れるようにしとけば。


「…チャボ!」

「ピィ!」

とっ、と腕に乗るチャボをカエルの前へ投げる。鷹匠の真似で空へ羽ばたかせれば前衛中衛はチャボに釘付けになる。そこへ時間差で飛び込んで一匹を蹴り倒し二匹を斬り払いもう一匹はぶん殴る。ああぐちゃって気持ち悪!

かわして襲ってきた奴は斜めに斬ってようやく降りてきたチャボに顔面を蹴り飛ばされて沈んだ。チャボってこんなに飛べたのね…。

最後の後衛一匹はぐえごっと鳴いて、あろうことか馬車の下からからやっと手を伸ばして這いずり出ようとしていた人に向かっていく。


「っくそ、チャボ!」

「ピヨッ」

無理!っと首を振られた。マジで賢いわねっ!?てか間に合わないっ!

精一杯走ったんだけどあのアンデッドフロッグの方が馬車に近くて、あとちょっとびょんとジャンプしたら踏み潰されてしまう!


「ふん!」

「ぎゃっ」

「え」


けれどすんでのところで、一人の男が立ちはだかり斧でカエルを薙ぎ払った。そして壊れた馬車を片手で起こすとそこに倒れていた貴族のような男性を抱き起こしたの。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る