第七羽 おっさん、性別を考える。
肩にチャボをのせたまま街道を歩く。しばらくはなぁんにもないただの道って感じだけど街に近づくに連れて幅は広く凸凹はより少なく滑らかに整えられたものになっていく。馬車による轍も見え時々は分岐がありそこに標識的なものもたてられている。
「よしよし、ここをさらに西へ行けばつくわ…と、そろそろ切り替えんと不味いな」
「ピ?」
「あーチャボにはどうでもいいことかも知れないが一応俺は生まれた肉体の性別は男だからな。変な目で見られんように口調を変えるんだ」
「ピィ」
なるほどと言うようにうなずく…嘴をつきだす感じだが、頷いたチャボはやはり賢いわね。
うん、相変わらず脳内では女口調なんだけど、嗜好はノーマル…?いや無性が近いのかしら。自分でもよくわからないわ。口調はどっちでもいいけど考える時は女口調のがスムーズだわ。でも性的嗜好はよくわからないわね。服なんかは動きやすくて着心地が良ければいいかって感じだから、わざわざドレスやスカートを着たいと思わないし。でもかわいいのを眺めて愛でるのは好きね。もふもふは大好きだし。まあ至高はBLMLですが!
ただ自分が…とはならないのよねえ。父さん母さんには悪いけれどあたしの子供は期待しないでほしいわ。まあ兄さんたちがしっかり孫は見せてるからね。
甥っ子姪っ子はまだ小さくてコロコロしててかわいいわよ?もっと大きくなってやんちゃになってくると大変だろうけどね。
「チャボはオス…だよな」
「ピ」
「大きくなったら嫁さんがほしいか?」
「…?」
「まだわかんねえよな。そーだよな、うん、そん時ゃそん時考えよう」
魔物の子供相手に真剣に聞いてしまったわ。でもそう、今はわからない。いつかその時が来るまではいいじゃない。何にも囚われない自由の身よ!
「一緒に進みましょ。楽しくゆっくりと、ね」
ああ、なんだかチャボと二人だと気が楽でいいわね。こんなふうにずっと旅ができるといいな。
街道のなだらかになったカーブを歩いていよいよ街の喧騒が近づき検閲の列に並ぼうと近づいたところに、後ろから馬車が飛んできた。
「はあ!?」
さすがに受け止めるなんてことはできないから近くにいた人たちを突き飛ばして避けさせ、剣を抜いて構える。
悲鳴をあげる群衆は検閲に出ていた街の兵士が誘導しているから任せとくわ。庇いながら戦うとか器用なことはできないんですよ。
ドガシャ、と馬車が地面にぶつかって大破するとうぐっとうめく声が聞こえた。まさか乗ってる人がいたのかよ!しかし助けに行く暇もなくなにかが飛んでくる。
「ぐげ、ごぉ」
意味不明の醜い鳴き声がする。そいつは蛙が溶けたようなご面相のゾンビのような魔物だった。
「うげえ、アンデッドフロッグかよ…」
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