第六羽 おっさん、プラス一羽。
よく洗っても地味な茶色の羽。腹側はやや白っぽいかしら。あら、こうしてじっくり見るとこの魔物って鶏の雛にそっくりだわ。全体的に茶色いからコーチンとかボリスブラウンとか?どうして気づかなかったのかしら、ってついさっきまでは前世なんて覚えてなかったものねー。これからもこういうことがあるのかしらね。まあでも新鮮な驚きって愉快よ。あたしって本当にラッキー。
「ピィ」
「あんたまだ子供よね。オス…だと思うけど名前はなんにしようかしら。ギルドで登録するまでに考えておくわね」
「ピ」
「…賢そうネあんた」
ペットとはいえ魔物は魔物だから登録は必要なんだけど。思ったより頭が良さそうだわ。言葉が通じてる気がするんですもの。
洗ったあともう一度火をおこして羽を乾かすように言ったら自分で火のそばに近づいたのよ。子供だと思うんだけど特殊個体なのかもしれない。生命力も強そうで怪我してると思ったのに今はもうよろよろもしてないし、もしかしたらいい相棒になるかもね。チャボはおとなしい方みたいだけど鶏ってけっこう気が強いって聞いたこともあるし。
あとね、この世界恋愛対象に性別関係ないのって魔物がそこら中にいて死が身近っていうのもあるのかどっちでも子が産めるのよ…。つまり、この子ももう少し大きく?なれば卵を生むと思うの。番がいなきゃ無精卵よ。遠慮なく食べられるわ!
なんか最初に慌てて素の女口調で話しちゃっても気にしてないみたいだしこの子とは口調変えないでいくけど、一応話せばわかるみたいだから聞いてみたら卵食べてもオッケーみたいだし、先々の楽しみが増えたわー。
白湯だけだけど口にいれたら少し落ち着くわ。ちっこい鶏にも手のひらに少しのせて冷ましてから見せたら飲んでくれたし。お腹はすいてないか聞くとこてっと首をかしげた。今は空いてなさそうね。
勢いでうちの子にしちゃったけど今さらながら家族や仲間はいないのか聞いたらまた首をかしげてる。いない、なのか気にしない、なのか。どちらにしても構わないってことみたいだから良かったわ。
汚れを落として水分もとったし、そろそろ行こっか。
「じゃあまずは隣町に行くわよ。とりあえずあんたの仮名はチャボね」
「ピ」
あたし茶色い鶏ってみんなチャボだと思い込んでたのよねー。種族名かよって?この世界にないんだからいいのよ。多分。少なくともこの地域じゃ知らないからいいのよ。仮だしね!
ウズラくらいの大きさで全身茶色の中雛くらいに見える魔物のチャボ(仮)を連れて森から出る。
獣道のような細い通りを抜けて街道に戻ると再び南西へ向かう。足元ちょっと斜め後ろからおしりをフリフリしながらてててっとついてくるちっこいのに自然と顔が緩んでしまう。だけど踏んづけたらいかんと思って肩に乗せればリラックスしたように平たくなって目を細めてる。かっわい。
うーん、いい拾い物したわー。
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