第五羽 おっさん、ちっこいのを拾う。

まあ今はパーティ追放されちゃってるけどね…。ギルドに行って確かめなきゃだけど多分ギルド員資格剥奪とかはないと思うわ。あの子たち悪い子じゃないから。


カップの湯も沸いてきたところで生乾きの装備を身につけて、白湯をすする。うーんしみるわぁ。ここらはちょっと暖かくなってきた季節だけどまだ春先だから行水は中年の身に堪えるのよ…。

あ、今三十路なんてまだ若いだろって思った?この職業アスリートみたいなもんだから二十代がピークみたいなもんよ。だからあたしって中堅冒険者ってか中年冒険者でおかしくないの。この年でも活躍できるったら本当の実力者よね。もてはやされるのも一部の特級冒険者くらいなんだからね!ほとんどは魔物討伐だって小物の掃除くらいでみんな雑用みたいなもんなのよ?本当、ケチな商売だわよ。


まああたしは幸運にもいい先生に出会ったお陰で剣術はなんとか、基礎は完璧よ!発展させた技はついぞできなかったけど鍛練は続けてるので今でも多少はできるの。本当に心底感謝してる。だからこそ気ままに旅にも出れるってもんだもの。


火の始末をして、荷袋を体に巻き付けて固定する。よし、これで動ける。魔物避けの香って強すぎる魔物は気にしないし弱すぎる魔物にはあまり効かないのよね。小物なら一般人でも倒したり追い払えるし大物なら逃げるが勝ちってとこかしら。まあ魔物にとっては鬱陶しいとかで避けるだけらしいし。

「さあて、何が出て…」

白湯ができた辺りで感じてた気配。今は五メートルほど後方にいる。いつでも抜刀できるように腰を落としてゆっくり振り向いた。あたしの目に飛び込んできたのはよくいる鳥形の魔物。知っているはずのそれは見知っているものよりちっこくて真ん丸かった。薄汚れてはいるけどふわふわ柔らかそうな体にちっちゃいあんよでよちよち、いやよろよろ?歩いて近づいてくる。目は大きく丸くてクリクリしてるんだろう。今は半分しょぼしょぼと閉じてるが。心なしか鶏冠もちょっと萎れているような。


気配も弱々しかったがこれは子供の気配だからかと思ったが。

「ちょっと…血が、怪我してるじゃない!」

ちっこい丸いのをわっしと掴むと川に入れてもしゃくしゃ洗った。抵抗はない。あ、もちろん普通の鳥はこんな乱暴に扱っちゃダメよ。これは魔物だからね。よく洗って水からあげれば驚いたのか目を見開いて、やっぱりくりくりとした大きな目だ。

「ぎゃ、ぎゃんかわああああぁ!」

何を隠そう、あたしはモフモフ好きでもあるのだ。この世界魔物でも無害ならペットにできるほど身近に魔物が溢れてるんだけど。今まで思い付かなかったのが不思議なくらいよね。


「ようし、あんたは今からうちの子よ!」


理想のカップル愛でる前にモフモフを愛でるわよっ!

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