第2話
──知らない場所、自分のものではない体。
そのような状況であるのだから、おそらく最近の漫画とか小説とかによく出てくるシチュエーション──異世界トリップという現象が当てはまるのではないか、と考えることになるのだった。
いや、今回の場合は厳密にいうと異世界転生というやつかな?
私の身体、完全に別人のものだし。
……まあ、そこまで異世界ものに詳しくないので、今は深く考えず脇に置いておこう。
とにもかくにも、今いるここは不思議なことに地球ではない。
その事実が最も重要である。
ちなみにその確信に至ったのは、つい先ほどだ。
今まであまりにも眠かったため、周囲の把握がまるで出来ていなかったけれど、「あ、これ異世界だ」と即座に分かる現象が起きたのである。
現在私は、森の中にいた。
ぽつんとひとりで立っている。
しかし、私は眠りから
頭でしっかりと理解している。
ここは──夢の中なのだと。
夢だと自覚している夢。
──白昼夢。
おそらく私は、現在それを見ていた。
正直驚くしかない。
ここまではっきりとした白昼夢を見るのは初めてだ。
まるで現実ではないかと錯覚してしまうほどに、リアルである。
けれど、これは夢なのだときちんと分かっているから、少しばかり混乱してしまう。なかなかにややこしい。
こうなったきっかけは、多分『眠くて考えがまとまらないから、どうせなら夢の中で物事を考えられたらいいのに』と思いながら眠ったことだと思う。
そうしたら、いつの間にか夢の中に森が出てきた。
おまけに思考も驚くほどに明瞭だ。まったく眠くない。
まあ、現在私の身体は眠っている状況なのだけれど。
そう思いながら、少しばかり足踏みしてみると、落ち葉に覆われた地面の柔らかな感触がしっかりと足の裏に伝わってくる。
その後、おもむろに近くに生えている木まで移動。
私の身体よりも太い幹に手を伸ばし、触ってみる。
予想通りの確かな感触。
すごい。もう本物だ、これ。いや、夢なんだけれど……。
そのように自分に突っ込みを入れながら、先ほどより私はじわじわといまの自分が何者であるのかを理解していく。
──
普通、人は本能よりも理性の方が強い。
けれど現在の私はその逆だ。
つまりは、人ではない。
ああ、そうだ。人外なのだ。
──夢魔。
夢に住まう魔物。
おそらく、そんな生き物に生まれ変わってしまっていた。
……とまあ、そういうことで、ここは異世界であって地球ではないと残念なことに私としては断言できてしまうのだった。
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