20,タマタマキックは致命的!

「うおおおおおお!! あっ、あっ、あーん!!」


 きょ、局部に、使う当てもない局部に何かが衝撃したッ!!


 今すぐ何が起きたか確認したいが、意識はあるものの極度の空腹で瞼を開く体力は残っていないッ!!


「なんでこんな所に産業廃棄物が捨ててあるのよ。せっかくの初日の出が台無しじゃない。うっわ、しかもヒゲ伸びてるしいつもより汚い」


「お姉ちゃん、言い過ぎだよ。きっと何かあったんだよ。お兄ちゃん、大丈夫? 起きられる?」


 なるほど、状況は理解した。耳を澄ませばキモい汚いキショいなど、周囲のざわめきが聞こえてくる。


 どうやら日の出間近で渚に人間ムシケラどもが集まり、僕は打ち上げられた何かとして悪しき意味での注目を浴びているのだ。


 僕のすぐそばに立っていると思われるのは雪姫たんとアリス。せっかく雪姫たんが心配してくれているのだから瞼をパッチリ開いて大丈夫アピールしたいところだが、残念ながら空元気さえもできぬ容態だ。


 そうか。僕にも心配してくれる人がいるのか。なら、生きてみれば良かったかもな。死んで後悔とは正にこのこと。


 だがそんな人に看取られて締めくくる人生、結果的には満更でもなかったな。


 なんだかんだ他人に危害を加えず、環境に優しく食料問題にも取り組んできた僕を、神は見放さなかったということか。


 だがアリス、キサマは許さん。タマタマキックさえなければ、僕は命を落とさなかった。弱ったからだにこの激痛は致命傷。痛みを訴え叫んだ僕は、とうとう深い眠りへ墜ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る