13,ニートを決意した理由
大学時代、僕は周囲の人間が己の命を繋ぐために奴隷を志願し、それでも数多の組織にその役目を断られるさまを毎日のように見ていて心底嫌気が差した。当時はそれがニートライフを決意した決定的な理由だった。
しかし他にも僕には気になっていることがある。それは国民の三大義務の一つである『納税』だ。
税金とは国家運営や公共の福祉を充実させるために使われるもので、公務員の生活の糧にもなっている。そう、問題はその公務員だ。僕は公務員に対して好感を抱いていない。ご両親のご依頼で雪姫たんを迎えに公立小学校へ出向けば公務員である学校職員が、これまた公務員である警察官を呼び事情聴取が始まる。僕がシロだと判ると舌打ちをして去ってゆく。僕の容姿からして絶対クロだと思ったのかもしれないが、善良な市民を疑うくらいなら未処理案件を一件でも多く解消し困っている人々を救えば良いではないか。
だがそれだけではない。税金とは得てして無駄遣いされやすい代物。例えば教職員。彼らは本当に児童の規範に成り得る人物だろうか。幼い頃は大人の言うことは概ね正しいと思い込まされていたが、いざ自分が大人になってからこれまで出会った教職員を思い出してみると、実に未熟でつまらぬ者が殆どだ。
「ふぅん。一応考えあってのニートなのね。い・ち・お・う」
ここまで語ったところでアリスが口を挟んできた。
「一応とはなんだ一応とはー!! 僕はニートである自分を誇りに思っているのだこのクソアマがー!!」
「しっ! だから公共の場で騒ぐなっての!」
「お兄ちゃんは学校の先生が嫌いなの?」
「うん、そうだね雪姫たん! 学校の先生も殆どの人間も僕はあまり好きではないんだ。でもそれは純真な雪姫たんにはとってもつらいお話になるかもしれないから、いやになったら耳を塞いだりプールで泳いだりしていいからね。
だがアリス貴様は耳に入り込んだ水を流してよーく聞け! そしてそれを噛み砕いて雪姫たんに不快感を与えぬよう説明するのだ!」
「わかったわよホントうるさいわね。早く喋って大人しくなりなさい」
「ふん。そんなに聞きたいなら話してやろうツンデレめ。いいか、国民の義務として強制的に徴収される税金。しかし本当に公務員という生き物はこれを収受するに値する存在であるか。そこが問題だ。無論、すべての公務員が悪者と言うつもりは毛頭ない。中には善良な者も在るだろう。
だがしかーし!! 善良な者が溢れるほど世の中は綺麗ではなーい!!
いいか、繰り返しだが、公務員とは国民の税金を生活の糧にする生き物だ。
だがどうだ? 教職者はイジメを
そんな弱った民を苦しめ悲しませる非道な連中に貴重な生活資金を払う義理など何処にあるというのだ!!」
僕の持論は違法性こそあれ良識には反していない。どうだアリス、見事に論破された屈辱を存分に味わうが良い。
「真面目に働いてる公務員に払う義理はあるんじゃないの?」
なんだ、意外と冷静に返してきやがった。論破され苦痛に歪む顔を拝めると思いきや、少々侮っていたか。
「あぁ確かにな。だがそれは働かぬ者へ支払われる予定だった給金を働く者へ横流しするシステムを作れば良い。だがそこまで綺麗な世の中になってしまうとニートである自分に誇りを持てなくなってしまうだろう?」
「つまり、綺麗な世の中になればアンタはニートをやめるの?」
「そうだな、他にも職場の不健全な人間が一掃されて働きやすく、人間性と成果に応じた報酬が公平に得られるのなら働くかもな」
「つまりアンタは、一生ニートってことね」
「何を言う。人類が愚行を反省し改善すれば働くという意味を理解できぬのか?」
「世の中そう簡単に変わらないでしょ。失望してるのはニートじゃない私も同じ。将来の夢は玉の輿か大企業の正社員」
「ガハハハハ! キサマ理解しているではないか! そうさ、世間は大失望時代だ! キサマのようなゲスが玉の輿なんて夢のまた夢だから諦めろ! まぁせいぜい大企業の正社員を夢見てハァハァするが良い!」
「うっさいわねこのクソ! 触れたくないからキン○マ蹴れないし」
さぁ世間よ、ニートを撲滅したければ即座に改革を執り行うが良い! それができぬ限り、働かなくてもなんやかんや生きてゆける世の中は変わらず労働人口は下降の一途。何も策を練らなかったり逆に神経を逆撫でするようなことをすれば、ニートはニートであり続け、増殖は勢いを増すばかりだぞ!
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