終夜

夜鷹

第1話

真っ暗な黒に塗りつぶされた闇が全てを飲み込んでしまいそうなそんな夜だ。僅かな星たちの精一杯の虹彩と大きな月の暖かな眼差しだけが私を照らしてくれる。私はこの闇の中を掻き分けながら今走っている。いや、逃げているのだ。何からと言われればどう答えていいのか分からない。くっきりとした具体的な「なにか」ではなく、限りなく抽象的なでも確かに私を苦しめるモヤモヤとした喉を締められる苦痛から逃げているのだ。誰もいない夜の果て。私はそこに向かっているのだと思う。この世界の異質な塊である私は隅に押し寄せられるのだ。頭は変に冷たく冷静になりながらも、体はどんどんと熱を持ち、熱く燃え上がる感覚に陥る。悲しみ。恐怖。怒り。不安。孤独。涙。私を攻撃する全ての感情が私の体からなくなればいい。あわよくば私という存在がいつの間にか溶けて消えて無くなればいい。と。本気で思った。私は私自身を否定するかのように暗く冷たい夜の深く底に身を投じた。










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終夜 夜鷹 @nemurenaiyoru

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