第6話 耳元で
風邪もすっかり良くなって登校した僕はいつもの陰キャラポジションである廊下側の端の席へと腰を降ろして一息を吐く。
陰キャの僕に話しかけてくれるクラスメイトなんていないので、一人でのんびりとイヤホンから聞こえてくるマイリストに耳を傾ける。
ふと、君島さんに視線を向けてしまう。
相変わらずクラスの中心でみんなに囲まれて話をしている。
もしも、彼女がお見舞いに来てくれた女の子なら、どれだけ幸せなんだろう。
そんな妄想をしていると、目の前に影が出来ていた。
「【テル君。大丈夫だった?】」
えっ?
目の前の人物へと視線を上げると、君島さんが目の前に立っていた。
僕は驚き過ぎて言葉が発することが出来なくて、ただただ頷いた。
「そっか~よかった。【テル君、私見ちゃった。凄く優しいんだね】ゴウ君だっけ?凄く可愛かったよ」
えっ?えっ?えっ?
なんでゴウのこと知ってるの?
まだ母さんにも名前教えてないのに???
もしかして?
「【テル君。大丈夫?】」
彼女が僕の顔を覗き込む様に顔を近づける。
本当に心配するようにトーンを落とした抑揚のある声で、彼女が僕を心配している。
「きっ昨日は……ありがとう」
僕は核心は無かった。
だけど、もしかしたらと言う思いを込めてお礼を口にする。
「どういたしまして」
やっぱり君島さんかお見舞いに来てくれたんだ。
でも、どうして?今まで全然話したことがなかったのに?
「……ねぇ、テル君。今日から一緒に勉強会しない?」
僕が悩んでいると、君島さんから爆弾が投下される。
今週は、来週から始まるテスト前。
君島さんから勉強会をしようなんて入れるはずがない!!
そんなことを言われるなんてまったく思わなくて、何を言われたのか理解できなかった。
「ダメ?」
覗き込むように耳元でささやかれる。
「ダメじゃないです!!!」
理解は出来ていない。
だけど条件反射で応えていた。
「ふふ、嬉しい。じゃあ、放課後図書館で勉強しようね」
彼女はそれだけ告げて机から離れていった。
離れていく前に見せてくれた笑顔は、声以上に僕の脳をトロけさせる。
君島さんが僕の耳元で声を発した?
【ダメ?】だって……
発せられた彼女の声は吐息すら聞こえてきて、僕の耳にずっと残り続けた。
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