第3話 ルール説明
金融取引を中心として成長し、今では七〇社以上の企業と三〇万人以上の従業員を抱える日本最大の財閥、『
「まあ、知ってるとは思うが、天遊学園に入学する生徒は、別に全員が全員超優秀というわけじゃねー。実力はピンキリだ」
「入学試験もそこまで厳しいわけではないし、入学の定員も定めていないしねー。来るもの拒まずってカンジなんだろうね」
翔と咲良は天遊学園近くのハンバーガーショップのテーブル席で向かい合い、昼食をとっていた。
「いや、てゆーか、なんでお前付いて来てんだよ」
「別にいいじゃーん。一緒にお昼しようよー。私たち友達でしょ?」
「別に俺はお前と友達になった記憶はねーよ」
注文したタルタルソースたっぷりのチキンバーガーにかぶりつきながら、翔はキレ気味にそう言う。
一方、咲良はホイップたっぷりの甘ったるそうなフルーツバーガーを上品に切り分け、一口摘みながら
「まあ、いいじゃない。一人で食べるより二人で食べるほうが、ご飯はおいしーよ」
「何人で食べても、味覚的にも栄養的にも変わりゃしねーだろ」
「かもね。でも一人で食べたご飯はおいしくないよ」
なんだか想像よりも話が暗くなってきたので、咲良は慌てて話題を戻すことにした。
「で、さっきの話の続き。なんで、入学試験は緩くて、入学定員も設定されてないのに、もっと多くの人が入学しないんだろ?」
「あァ? んなこと分かり切ってんだろ。この学園に入学した生徒にはある『課題』が課せられるからだよ」
そう言うと翔はズボンのポケットから学園支給の携帯端末を取り出し、起動する。そして、携帯端末をテーブルの上に置き、その画面を咲良に見せた。
黒い画面に『10000000』の白い文字が踊っている。
「島に来たときに渡されたこの端末。こいつは連絡を取り合ったり、ネットサーフィンしたり、写真撮ったりと基本的にはスマートフォンと同じ機能を持つが、それ以外に身分証明書と財布の役割も兼ねている」
天遊島には独自の通貨が流通している。
仮想通貨『クロック』。
島では紙幣や硬貨は使われておらず、代わりに電子端末を用いて、クロックが使われている。この仮想通貨はークロック(変動はするものの、基本的には)一円の価値を持っている。
「一〇〇〇万クロック。日本円にして約一〇〇〇万円。学園側は、入学した生徒全員にこんな大金を貸し与え、それを自由に使うことを許可している。そしてそれと同時に、俺たちに高校三年間でその金を一億クロックにすることを課題として与えている」
神々の遊びみたいな話だが、学園側は本気でこんなことをやっている。
株取引、起業、なんならコツコツバイトをしてお金を稼いでもいい。ルールで定められた範囲内で自由に資産を増やさなければならない。
だが、しかし
「額が大きすぎて、金銭感覚が麻痺してるけど、それって何気に無理ゲーじゃない?」
「ああ、簡単ではねーな」
「……もしそれができなかったら?」
「学園側はあくまでも俺たちに資金を貸し与えている。つまり、三年後に俺らはたっぷりと利子をつけて、その金を返す必要がある。おそらくそれで課題完了なんだろーな。で、もしそれができなかったら場合は、担保である『生徒自身の身柄』が取り押さえられる」
「? つまり、どーゆうこと?」
いまいちことの重大さが理解できていない口の周りにホイップをつけた咲良に、翔は簡潔にこう伝えることにした。
「要するに、課題をクリアできないときは、足りない分の金を身体で払うんだよ」
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