第10話 夏の彼方

ミナミモト【じゃあ、最後はアンバーさんお願いします】

田中太郎【これで最後なんですね】

ブルーベリー【なんだかちょっと寂しい気もします】

彩路【何事もいつか終りが来るものだよ】

アンバー【僕のは、中一の夏休みに家出した話です】

ミナミモト【ありそうで実はなかったパターン】

サクラ【誰しも一度はやるものですけど、どういう不思議なエピソードが?】

バニラアイス【そもそもどうして家出を?親と喧嘩でもしたとか?】

アンバー【なんというか、自分がどこまで行けるのか確かめたかったというか】

key【眩しいですね】

グロイ【若さの特権みたいなところはあるね】

ランドスター【大人になった今となっては羨ましい限りです】

田中太郎【(誰も突っ込まないのは優しさなんだろうか)】

ワーミー【???】

ミナミモト【それで?家出したときに何かあったんすよね?】

アンバー【家を出て、行き先も決めずに電車を乗り継いだ先の田舎町で、知らないお姉さんに助けてもらったんです】

サクラ【なるほど、確かにそうあることではないですね】

田中太郎【助けてもらったっていうのは具体的に言うと?】

アンバー【数日の間だけ、衣食住の面倒を】

ブルーベリー【年下の子供相手とはいえ、出すところに出せば警察が動く話ですよね】

アンバー【いえ、別に僕が何かされたとか何かしたとかそういうのはなくて】

ブルーベリー【あぁ、いえ。良かれと思ってされたことなら】

ミナミモト【でも、裏もないのに見ず知らずの子供の面倒を見るとか、よほどの善人なんすねその人】

アンバー【はい、良い人でした】

アンバー【そのお姉さんも昔、自分と同じようにどこか遠くに行きたくて家出したことがあって、僕のこと放っておけなかったって言ってて】

彩路【類は友を呼ぶ】

key【私の好きな言葉です】

ミナミモト【そのお姉さんとどんなことを?】

アンバー【何もなかったといえば何もなかったんですけど。少なくとも僕には】

アンバー【本当にただ数日お姉さんの家で食べ物とか貰っただけで】

アンバー【お姉さんに絡んでた知らない男の人に殴られたりはしましたけど】

ブルーベリー【カッコいい】

バニラアイス【それは、そのお姉さんもアンバーさんのこと悪くは思わないでしょうね】

アンバー【僕じゃなくて、お姉さんの方にいろいろあったらしくて】

アンバー【僕を見て、昔のこと思い出したって】

ミナミモト【昔のこと?】

アンバー【昔は世界のいろんなところに行ってみたいって夢があったけど、大人になるにつれて忘れちゃってたのを、僕を見て思い出したって】

アンバー【別れの日にそう言われて】

アンバー【多分今は海外にいるんだと思います】

田中太郎【なるほど、確かに不思議と言えば不思議な話ですね】

key【アンバーさんの若さとか情熱みたいなものが届いたんでしょう】

グロイ【アンバー君も、性懲りもなくまたどこかへ行く気なのかい?】

アンバー【そうですね】


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