第1話 幸運の女神

 ———ミナミモトさんが入室しました

 ———チャットルームには誰もいません

 ———チャットルームには誰もいません

 ———チャットルームには誰もいません

 ———田中太郎さんが入室しました


ミナミモト【ばんわー】

田中太郎【こんばんは】

田中太郎【「不思議な体験をした人募集」って書かれてたので入ってみました】

ミナミモト【そうなんです、ちょっとそういう人の話聞きたいなーって思って】

ミナミモト【田中太郎さんは何かそういう体験したことありますか?】

田中太郎【そこまで大したことでもないんですけど、】


 ———ブルーベリーさんが入室しました


田中太郎【あ、こんばんは】

ミナミモト【ばんわー】

ブルーベリー【こんにちはです】

ブルーベリー【すみません、お話し中でしたか】

ミナミモト【いえお気になさらず】

田中太郎【これから本題について話しはじめるってところだったので大丈夫ですよ】

ブルーベリー【そうですか、ありがとうございます】

ミナミモト【で、田中太郎さんはどんな体験を?】

田中太郎【一言で言うと、】

田中太郎【電車で毎朝顔見てた人とある日ふとしたきっかけで仲良くなった】

田中太郎【っていうなんてことない話なんですけど】

ブルーベリー【漫画とかだとありがちですけど、現実だとなかなかないと思います】

ミナミモト【そうですね、】

ミナミモト【ちなみに田中太郎さんは男性ですか?】

田中太郎【はい。いまは大学二年です】

ブルーベリー【お相手の方は?】

田中太郎【一応、女性です】

ミナミモト【一応って(笑)】

ブルーベリー【お歳は?】

田中太郎【僕の一個下ですね】

ミナミモト【じゃそこまで歳は離れてないと。きちんと知り合う以前からその人のこと気になってたんですよね、理由はなんだったんですか?】

田中太郎【これも変な話なんですけど、】

田中太郎【朝の通学の電車でその人を見かけた日、いつも良いこと起こるなって気付いたんです、ある時期から】

ミナミモト【そういう良い“運気”みたいなのをお持ちの女性だったんでしょうか】

田中太郎【まあ偶然か、僕の思い込みだと思いますけどね】

ブルーベリー【でもずっと電車で乗り合わせて「あ、いるな」くらいの認識だったんですよね、どうして接点ができたんですか?】

田中太郎【これも別に大したことでもないんですけど、】

田中太郎【その人がパスケース落としたのを拾って届けてあげただけで】

ミナミモト【わーお】

ブルーベリー【少女漫画みたいな話ですね】

田中太郎【いや、そこまででも】

ミナミモト【いやいや、勇気あるじゃないですか。十分不思議、というかロマンチックな話です】

ミナミモト【その方とは今どうなんですか?】

田中太郎【あー、えーっと】


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