僕たちの轍

棗颯介

プロローグ

 通い慣れた道。変わる信号。街の雑踏。青い空。千切れ浮かぶ白い雲。

 すべていつもと同じ。昨日と何も変わらない。誰にとっても当たり前のようにそこにある日常。もちろん自分にとってもそうだ。

 でも、一つだけ変わったものがある。

 一人だけ、ずっと赤信号で立ち止まっているヤツがいる。

 

 ———今日こそ、進むんだ。


 青信号に導かれ、あるいは後ろにごった返す人々に背中を押されるように、俺は今日を歩きはじめる。昨日までと変わらずに。

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