2021/04/21

 愛良に誘われて3人で池の公園の桜を見に来たけれど、芽村はいつも通り池だの桜だの被写体を探してふらふらとすぐにいなくなった。出不精な宮古と愛良は近くのブランコに腰かける。


「こんなに綺麗なのにプログラムなんて可哀想だ」

 満開の桜を見上げて愛良が言った。

 愛良がそう言ったのは多分昨日桜の開花宣言と一緒にプログラムが始まったってニュースをやってたからだと推察する。宮古はうん、とふーんの中間みたいな曖昧な返事で愛良を盗み見た。

 愛良はどんなに遠い県の話でも自分の隣人のように悼むから、優しさの価値観が狂わされる。解らない。そんな単純なことでこんなにもぞわぞわする。

「でもあったかくなってきたならやりやすいんじゃない?」

「えええー?」

 的外れな意見を返すと愛良は明らかに困った顔をした。ギイギイと不満げにブランコが軋む。

「宮古もプログラム自体はあり得ないと思うけどー」

「だろだろっ?」

 笑顔で同意した隣人が眩しい。

 愛良は優しいからプログラムが受け入れられないんだろうけど、俺はプログラムの生産性が期待できないからプログラムはだめだと思っている。

 全然同じじゃないって知らないだろ、愛良。

 この違いに愛良が気づくまで暫く黙っていてもいいかなーって思って、カフェオレと一緒に飲み込んだ。

「芽村は」

「あ、あそこにいる」

「ほんとだ」

 カメラに夢中な芽村を探すと池のほとりにしゃがんでいた。肩や髪に花びらがついてても芽村は全然気づいていなさそうだった。愛良がブランコから立ち上がって芽村を呼ぶ。

「ゆきじちゃーんいいの撮れたかぁ?」

「うん!今日は晴れてるしコントラストもすごく綺麗さ」

 桜のついた長いスカートをひらひらさせて隣人は笑う。確かに今日の澄んだ青空は桜のピンクによく映える。

「ふたりも撮るさ、はいチーズさ」

 戻ってきた芽村がこっちにカメラを向けたから宮古は思わず顔を背けたけれど、その瞬間愛良が宮古の頭を掴んだから、多分めちゃくちゃ変な顔でカメラに収まった。

「愛良!」

 宮古が文句を言う前に突風が桜を攫って、一瞬でみんな花びらまみれになったから思わず笑ってしまった。

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