第六話 真実と結果(語り手:とら)

流れる血はカーペットに染み込んで、机やソファーには血が多く飛び散っている。

頭があるはずの場所には、平べったいパンに黒髪を伸ばしてジャムを塗りたくったような、元の形を殆ど持っていないモノがあった。

その髪、姿から、それが誰かがわかった。

『ゆうっ...ゆう!頼む!息をしろ!お前が死んだら、俺はっ...』

返事を返すはずもなかった。頭を、俺があつを殺した時と同じ様に、その形がなくなるほどに、殴り潰されていた。

『ゆう...』

すてだ。あいつが、ゆうを殺した。しょうも殺した。

すてに対する怒りが湧き上がって来る。

『ゆう...ここで待っててくれ。俺が、すてを殺して、そうしたら俺も一緒にそっちに行くから。』

すて「行きたいなら...連れてってやるよ。」

後ろを振り向くと、そこにすてが立っていた。

『すて...』

すて「あつやしょうが殺された時と反応が全然違う。随分冷静さを欠いてるな。」

何かされる前に殴りかかった。高校時代はすてに喧嘩で負けた事はなかった。正面からの殴り合いなら、間違いなく勝てる。

しかし、俺の拳は、すてに軽く払われた。腕を掴みかかるが、あり得ないほどの力で払われる。

そして、パンチが飛んでくる。防御は間に合わない。

顎に強く食らって、そのまま後ろに倒れてしまった。

起きあがろうとするが、すてに抑えられる。びくともしない。

そして、すてが注射器を出してきて、何も抵抗できないまま、首筋に刺される。

すぐに視界が歪み出す。力も出なくなり、吐き気と頭痛で気持ち悪い。

意識もだんだんとどこかへいってしまう。

これでゆう、しょう、あつと同じところへ行けるのか。

しかし...せめて最期に...

しょうを......

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る