新米吸血鬼は話が違うと荒ぶり、キョドり吸血鬼は鬱の波に溺れる。
幸いなことに遮光カーテンから身体がはだけず火傷もせずに無事に夜を迎えることが出来た。
俺が目覚めた時、既にキドは起きていた様だ。
「おはようございます和希さん」
いやにサッパリした感じで良い睡眠が取れたように見える。俺はといえば不自然な体勢で寝てたせいか、身体じゅうバキボキしている気がしていた。まぁ、実際は生きている訳じゃないんだから痛みなんかあってたまるか。
「なぁ志摩子さんと、もう会ったりはしてないのか? それに何だっけ、本間さんは本当に死んじゃったのかよ?」
キドは志摩子さんの事を散々鬼のようだとか、血も涙もない悪魔のようだと言っていたが、この世にまだ居るのならば、一度は会ってみたいと思った。
でも、どうやら志摩子さんとキドの為にこの世から居なくなった本間さんとは、永久に会う事は叶わないみたいだ。
キドのこの世の終わりみたいな表情が全てを物語っている。
「実はですね……」
「はっはー。木戸、やったな!」
「悟史、やっと1人前になったのね!」
いつの間にかワンルームの狭い玄関先に、パリピな格好の男女二人組が立って騒いでいる。
人を見た目で判断してはいけないが、苦手なタイプの出来ればお近付きになりたくない人種だ。
「……し、志摩子さんに本間まで?! 何をしに来たのですか? もう、わたしは貴女たちには関わりたくないと言った筈ですが?」
「もう悟史ったら、まだそんな事言ってるの? 結構執念深いのね~」
「木戸、悪かった。戻って来てくれないか? 君が居ないと、僕達の面倒を誰が見てくれるというんだ?」
なんだって⁉ この人達がキドの話した志摩子と本間だと? 確かにじっくり見たら美男美女だけど、この適応力の高さってどうよ。
悔しいが現代に生まれ育った俺よりも馴染んでやがる。
「はじめまして、京二って呼んで良いよ。君の名前は?」
「志摩子よ、よろしくね。女の子でも良かったのに悟史。私はどっちも大好きよ」
キドの奴、話が全然違うじゃないか! あー騙された。うー腹が立つ。会って見たいって言うんじゃなかった。
「はじめまして。昨夜、キドのおっさんに噛まれてヴァンパイアになった街田和希です。新人で上手く血が吸えるか分かりませんが、精一杯頑張ります」
思いっ切り当て擦って言ってやったが、志摩子と京二は顔を見合わせるとお腹を抱えて大爆笑しやがった。くそぅ~、腹立つわー!
「うはははは、きみ、面白いねぇ〜」
「ぷっ、ふふふふふ……。カズちゃん可愛い〜」
おい、カズちゃんは勘弁してくれ。キドがこの2人に振り回されるのがよーく分かったわ。
「まぁ、立ち話も何なので狭いところですがお入りください」
「おい、キドのおっさん。狭いは余計だ。それに俺の家だぞ、少しは遠慮したらどうなんだ?」
不貞腐れて文句を言ったら、みんな神妙な顔をして床に座ったのだった。
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