人生はまるで映画のようで

 沈む夕陽を横目で見ながら、観覧車の天辺で君とキスをした。何年も同棲してきた君は唇を離した後くすぐったそうに笑う。


「好きよ」

「ああ僕もだよ」


 観覧車が天辺から乗降場に着く。僕は素早く君と手を繋がずに降りた。少し不思議そうな顔をしている君に、僕は笑いかける。


「喫煙所行こうよ」


 君は戸惑った顔のまま、少し不安そうな顔のまま、僕の後ろをトコトコと歩いている。

 喫煙所からほぼ見えなくなってきた夕陽に眼を細めながら、煙草に火をつけた。


「別れよう」

「え?」

「映画ならここでハッピーエンドだ。これ以上の盛り上がりはないだろう。長年の同棲で色々な問題を乗り越えてきて、最後は夕陽が見える日に観覧車でキス。もうエンドロールの時間だ」


 君の手が少し震えてライターで火をつけられていないのを見つめながら、僕は咥えている煙草を君の口元に持っていく。君が吸い込み火が点いた。


「エンドロールの後のおまけシーンだ。これをみて視聴者はこの二人は永遠に仲良くなるんだなって思うんだろうな。けど、ハッピーエンドを迎えてそれ以上の幸せが来る未来が僕にはわからないんだ」

「今からさらに幸せになればいいじゃん」

「そろそろ映画館から出る時間だ。さよなら」


 そう言い残し、映画館いや遊園地を出る。さ、次のハッピーエンドを探さないとな。

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