第76話 トッピングドラゴン

 麺ドラゴンを保存容器に入れて、奉納部位を回収した。


 では、次はトッピングドラゴンだな。


 向かいの部屋に行こう。



 ボス部屋の扉を開けた。


 トッピングドラゴンは相変わらず、部屋の中央にいる。


 あいつはどんな攻撃をしてくるのだろうか?


 想像も付かないなぁ。


 まあ、結局、出たとこ勝負をするしかないのか。


 では、行こうか。



 部屋に入った。


 いつものようにボスが一体追加された。


 俺たちは扉を固定し、ボスに近付いた。


「おおっと、新たな挑戦者たちの登場ですトッピンドラ!」


「これは楽しみですねぇトッピンドラ」


 突然上の方から声が聞こえてきた。


 上を見ると、天井に茶色い大きなスピーカーのようなものが二台取り付けられていた。


 あそこから音声が流れているようだ。


 それにしても、大きなスピーカーだな。


 縦横ともに二メートルくらいありそうだ。


 なんであんなに大きいんだ?


 それに挑戦者の登場って、どういうことなんだ?


「皆さん、こんにちはトッピンドラ! 私は実況の『トッピングドラゴン・ナルト』と申しますトッピンドラ。よろしくお願いしますトッピンドラ。そして、解説の『トッピングドラゴン・メンマ』さんですトッピンドラ」


「よろしくお願いしますトッピンドラ」


 実況と解説!?

 ナルトにメンマ!?


 なんでそんなのがいるんだよっ!?


「おふたりには『PDRトッピング具材早取り出し』に挑戦していただきますトッピンドラ!」


「なんだそれは!?」


「名前通りのものですトッピンドラ」


 あのアヒルに具材が入っていて、それを早く取り出せば良いのだろうか?


「それではルールを説明しますトッピンドラ。これから十秒以内に、そちらのオマル…… ではなく、トッピングドラゴンの中にある具材を取り出してもらいますトッピンドラ」


 今オマルって、言わなかったか!?


「取り出せた具材は持ち帰ることができますトッピンドラ」


 そういうゲームなのか?


「十秒経過でトッピングドラゴンは爆発しますトッピンドラ。お気を付けくださいトッピンドラ」


 また爆発するのかよっ!?


 このダンジョン、そればっかりだな!?


「何か質問はありますかトッピンドラ?」


「具材って、何があるんだ?」


「チャーシュー、ひき肉、つくね、長ネギ、タマネギ、わかめ、味付けたまご、メンマ、ナルト、もやし、角煮、コーン、キャベツ、のり、バター、ゆでたまご、ほうれん草、あおさ、ニラがありますトッピンドラ」


「多すぎる!? それはすべて必要なのか!?」


「必要ですトッピンドラ」


「十秒では取り出せないんじゃないのか!? 時間を延長してくれよ!」


「認められませんトッピンドラ。十秒でがんばってくださいトッピンドラ」


 くっ、厳しいな。


「具材はどこにあるんだ?」


「トッピングドラゴンの背中ですトッピンドラ」


 トッピングドラゴンの背中に青い蓋があった。


 あの中にあるのだろう。


 って、あれでは完全にオマルだな!


「中を見ても良いのか?」


「それは禁止とさせていただきますトッピンドラ」


 ダメなのかよ。


 本当に厳しいな。


「取り方はなんでも良いのか?」


「はい、問題ありませんトッピンドラ」


 なんでも良いのか。


 なら、魔法を使って取り出そうか?


「そろそろ始めますトッピンドラ」


「えっ!? もう!? ちょっと待てって!? ディディ、保存容器を出してくれ!」


「うむ」


 アイテムボックスから保存容器を取り出し、蓋を開けた。


「では、PDRトッピング具材早取り出し開始トッピンドラ!!」


 合図と同時に、トッピングドラゴンの背中の蓋が浮き上がり、地面に落ちた。


 俺とシャワイヤーは、トッピングドラゴンの背中に向かった。



 俺はトッピングドラゴンの背中の穴を覗き込んだ。


 えっ!?

 あれ!?


 何も入っていないだと!?


 これはいったいどういうことなんだ!?


「同志、何も入ってないゲスッスよ!?」


「こっちもだ!? なんだこれは!? 実況と解説、説明しろ!!」


「ふたりとも逃げるのじゃ! それはおそらく罠じゃ!!」


「えっ!?」


 そいつはあり得そうだな!


 急いで逃げないと!


 俺は魔法で身体能力を強化し、トッピングドラゴンから離れた。


 その直後、トッピングドラゴンが爆発した。



「みんな無事か!?」


「ワシは無事じゃ」


「俺君もだぜ!」


「ボックも無事である」


「オレっちも無事ッスよ~」


「おいらもなんとか逃げ切れたゲスッス! 同志こそケガはないゲスッスか?」


「ああ、ちょっと熱かったくらいだ。問題ないよ」


「それは何よりである」


 衣魔法は素晴らしい防御力だな!



「さて、この状況はどういうことなんだろうな?」


「これは実況と解説を見つけ出して、問いただすしかないのじゃ!」


「そうだな。よし、探そう!」


 俺は部屋を見回してみた。


 地上には隠れられそうな場所や、スタッフルームの扉はないようだ。


 とすると、部屋の外か?


 いや、怪しいのが、まだあったな。


 あのスピーカーは、なんであんなに大きいのかな?


 もしかして、あの中にいるのでは?



 シチローに乗って、スピーカーの近くにやって来た。


 では、取り外してみようか。


 スピーカーを取り外すと、中にオマルのようなアヒルの置物が二体入っていた。


「お前らが実況と解説で、本物のトッピングドラゴンなのか?」


「な、なんのことでしょうトッピンドラ?」


「わ、私たちはただの置物なんですねぇトッピンドラ」


「語尾が実況と解説と同じだな」


「ぐ、偶然ですよトッピンドラ」


「この期に及んで言い訳とは見苦しい! 成敗してやる!!」


「お、お許しをトッピンドラ…… ぎゃああああああああああっ!!!」


 俺たちは実況と解説を倒し、中に入っていたラーメンの材料を手に入れた。

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