第47話 そんな特性もありましたね

 こうなったら、この吊り革をどんどん引っ張ってみようか!


 俺は近くにあった吊り革を引っ張ってみた。


 そして、すぐさまその場を離れた。

 

 何が落ちてくるか分からないからな。


 その直後、引いた吊り革の真下に、直径五〇センチくらいの金色の金属の球体が落ちて来た。


 な、なんだと!?


 こんなものが落ちてくることもあるのかよっ!?


 殺意高いな!?

 怖すぎだろっ!?


 正直帰りたくなってきたけど、そうもいかないよな!


 これもスローライフのための試練だ!


 やるしかない!


 よし、次はこれを引くか!


「同志、おいらも手伝うゲスッス!」


「ああ、頼むよ。くれぐれも気を付けてな!」


「分かったゲスッス」


 シャワイヤーとともに吊り革を引っ張りまくった。


 いかり、金属バケツ、金ダライ、剣、槍、斧、鉄筋、植木鉢などなど、当たったら死ぬようなものがたくさん落ちて来た。


 恐ろしすぎだろ!?


 だが、ボスは見つからなかった。


 そして、最後の吊り革を引いた。


 また金色の金属の球体が落ちて来た。


 これがボスなのか?


 スローライフオーラ魔法の剣で叩いてみたが、なんの反応もなかった。


 これもボスではないようだ。


 なら、いったい何がボスなんだ!?


 訳が分からんな!



「ハヤトの兄さん~。これからどうします~?」


「うーむ、どうしようか?」


「ボスが見つからねぇし、もう帰るか?」


「せっかく来たのに倒さず帰るのもなぁ…… あっ、そういえば、アレがあるじゃないか!」


「何か良い手を思い付いたゲスッスか?」


「ああ、ボスがシレモンなら名前を尋ねれば答えるはずだ! その特性を利用して探してみよう!」


「おおっ、名案じゃな!」


「よし、やってみよう! 君はシレモンなのかぁぁぁっ!?」


 俺は大声で叫んだ。


「「その通りだミミミズ!! 余がシレモンにして、このダンジョンのボス『ツゥリィ・ノエサー』ミミミズ!!」」


 部屋の中から返事が聞こえた。


「やはりいるみたいだな! 声のした方を探してみよう!」


「分かったゲスッス!」


 俺たちは声のした方に向かった。



 ボス部屋の奥の壁際にやって来た。


 周囲には大小さまざまな大きさの岩が転がっている。


 この辺から聞こえたな。


 よし、探してみよう。



 周囲を見回してみたが、ボスはいないな。


 もしかして、岩陰に隠れているのか?


 俺は岩を退かしてみた。


 すると、岩の下に茶褐色のミミズのような生物が二匹いた。


 長さ二〇センチくらい、太さ一センチくらいだ。


 こいつらがボスなのだろうか?


 俺はミミズのような生物を捕まえてみた。


「ぐあああああっ!? お、おのれ、人間めミミミズ!! よくも汚い手で余をつかみおったなミミミズ!!」


「卑怯な人間めミミミズ! 余を離すのだミミミズ!!」


 ミミズたちが文句を言っている。


 どうやらこいつらがボスで間違いないようだ。


「こんなところに隠れていたのか」


「隠れていたのではないミミミズ! これは作戦ミミミズ!!」


「作戦? これが? いったいどんな作戦なんだ?」


「仕方ない、教えてやろうミミミズ! 部屋に入って来た人間は、垂れ下がっている吊り革がまず目に入るミミミズ!」


 確かにそうだな。


 目立つからな。


「それらが気になった人間は吊り革を引っ張ってしまうミミミズ!」


 うん、確かに引っ張ったな。


「そして、落ちてきたものに当たって死ぬミミミズ! そういう作戦ミミミズ!!」


「セコイなぁ」


「セコくないミミミズ! 完璧な作戦ミミミズ!!」


「完璧? 俺たちには効かなかったから完璧ではないだろ」


「うるさいミミミズ! 余が完璧と言ったら完璧なんだミミミズ!!」


 見事な屁理屈だな。



 さて、倒してしまおうか。


 俺とシャワイヤーで一匹ずつ倒した。


 その直後、ファンファーレのような音楽が鳴り響き、色取り取りの紙吹雪が降ってきた。


 そして、白い台座が二台現れた。


 その上には、ビーフジャーキーのようなものが大量に置いてあった。


 一枚の大きさは長さ二五センチくらい、幅一〇センチくらい、厚さは数ミリくらいとかなり大きい。


 これが今回の記念品か。


 いったいなんの肉なのだろうか?


 ちょっと神鑑定をしてもらおうか。


 サンクトは儀式を開始した。


 さて、ちょっと休憩するか。



「おっ、来たぜ! こいつは『ウマァ・ニー・クゥ』というシレモンの肉で食えるらしいぜ!」


「ほう、そうなのか。こいつは院長たちへの土産にしようか」


「そうじゃな」


「おいらの分も渡してくれゲスッス」


「えっ? 良いのか? 買取所で買い取ってもらえるかもしれないぞ?」


「泊めてもらっているお礼ゲスッス!」


「分かったよ」


 では、アイテムボックスに入れておこう。


 それと落ちてきたものも入れておこうか。



 よし、入れ終えたぞ!


 後はこのボスだな。


 こいつは売れるのだろうか?


 サンクトに調べてもらった。


 ボスの奉納部位は環帯という他よりも太い部分らしい。


 他の部分は買い取ってもらえないが、釣りの餌にはなるらしい。


 必要ないから一階の湖に投げておこうか。

 誰かが食べてくれるだろうしな。


 では、ダンジョンを出るか。



 ダンジョンの入り口にあるモヒジ・カンゾウに、骸骨とボスを奉納した。


 骸骨は一体、一〇よポイント、ボスは一体、五千よポイントだった。


 俺とシャワイヤーは六千よポイント入手した。



 その後、買取所でボス部屋にあったものを売却した。


 全部で百万ジカァで売れた。


 結構もうかったな。


 では、孤児院に帰るとしよう。

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