第45話 釣り場

 次の日。


 俺たちは釣り場ダンジョンにやって来た。


 森の中にポツンと建っている、年季の入った木造の掘っ立て小屋だ。

 入り口近くにモヒジ・カンゾウのお堂がある。


 この中がダンジョンになっているようだ。


 では、行こうか。



 中に入った。


 そこは広大な洞窟になっていた。


 どこぞのドーム何個分というレベルの広さだ。


 明らかに小屋より面積が広いぞ。


 謎の空間だなぁ。


 中央に長さ数十キロはありそうな大きな湖がある。


 青くて美しい湖だ。

 素晴らしい眺めだな。


 スローライフ許可証が手に入ったら、観光に来ようかな?


 それも良いかもしれないなぁ。


「同志、どうしたゲスッス? 早く行こうゲスッス!」


「ああ、そうだな!」


 そのためにも今は先に進まないとな!



 しばらく湖岸を歩いて行くと、下り階段を発見した。


 ここの階段もレッドカーペットが敷いてある、豪華なデザインになっているんだな。


 なぜなのだろうか?


 カスクソ邪神の趣味なのか?


 まあ、そこはどうでもいいか。


 さっさと下りてしまおう。


 目的地は地下三階だからな。



 階段を下りた先は、広大な室内プールの中のような場所だった。


 中央に巨大な競技用プールがある。


 長さ数十キロはありそうだ。


 な、なんだこれは!?


 各階に湖があるんじゃなかったのか!?


 あれはどう見てもプールじゃないか!?


 まさかあれを湖と言い張る気なのか!?


 詐欺なのではないか!?


 まあ、そんなのどうでもいいか。


 この階にも用はないし、さっさと通り抜けよう。



 プールサイドを歩いていると、釣り人がいた。


 グレーのフィッシングスーツを着た中年男性だ。


 プールで釣りって、奇妙な光景だな。


 おっ、糸が引いているぞ。


 何かがかかったみたいだな。


 いったい何が釣れるのだろう?


 ちょっと見ていこうか。



 リールの付いた黒い釣り竿が釣れた。


 プールで竿を一本釣りか、これもまた奇妙な光景だな。


 中年男性は素早く釣れた釣り竿のリールをもぎ取った。


「ぐああああああああっ!!!」


 釣れた釣り竿が叫び声を上げ、動かなくなった。


 あのリールが奉納部位なのだろう。


 なんだか手慣れているみたいだな。


 ここでよく釣りをしている人なのだろうか?


 まあ、どうでもいいか。


 先に進もう。



 しばらく歩くと、下り階段を発見した。


 デザインは先程と同じだ。


 よし、地下二階へ行こうか。



 階段を下りた先は、白いタイル張りの広大な空間だった。


 中央には巨大な浴槽がある。


 ここも長さ数十キロくらいありそうだ。


 今度は風呂なのかよっ!?


 釣り場ダンジョンなのに、釣り場っぽくない場所が続くんだな!!


 まあ、もうどうでもいいや!


 さっさと進もう!



「それにしても、まったくシレモンに遭遇せんのう」


 シチローがそうつぶやいた。


「ああ、そうだな。どうやら釣らないと、水の中から出て来ないみたいだな」


「退屈ゲスッス!」


「良いことじゃないッスか~。平和が一番ッスよ~」


「それでは修行にならないだろ」


 俺たちは雑談をしながら歩き続けた。



 おっ、下り階段を発見したぞ。


 デザインは先程と同じだな。


 次は目的地の地下三階か。


 いよいよだな、気を引き締めていかないと!


 さあ、行こうか!



 階段を下りた。


 な、なんだここは!?


 天井と壁は白い塗り壁、床はフローリングの広大な部屋だ。


 中央には、直径数十キロくらいある巨大な丼のようなものがある。


 もっとも、ほとんど地面に埋まっているけどな。


 地上に出ているのは、最上部の数十センチくらいだ。


 そして、丼の中には白濁スープで満たされている。


 これって、この階の釣り場はあの丼ということになるのだろうか?


 状況から考えるとそうなるよなぁ。


 なんでこんなデザインになったのだろうか?


 つくづくよく分からん場所だな。


 まあ、いいや。


 とりあえず、釣りをしてみよう。



 さて、針に餌を付けるか。


 どっちの餌が良いかな?


 まずは人間の足の裏の香りにしてみるか。


 人間の足の裏の香りって、どんな香りなんだ?


 うーむ?

 変な臭いはしないな。


 こんなので釣れるのかな?


 まあ、やってみれば分かるか。



 よし、できた。


「同志、こっちにも付けて欲しいゲスッス」


「ああ、分かったよ」


 シャワイヤーの釣り竿にも餌を付けた。


「では、始めるか!」


「たくさん釣るゲスッス!!」


 丼の中に針を投げた。


 すると、すぐさまスープの中から何かが出て来た。


 獣と鳥の頭部の骨と思われるものに、人間の首から下の骨がくっ付いた骸骨だ。


 身長二メートルくらいだ。


「おい、テメェら、人間クセェもん入れてんじゃねぇぞオイコラァ!!」


 えっ!?

 骨なのに臭いを感じるのか!?


「よくも俺様の昼寝を邪魔してくれたなテメェオラァ!!」


 スープの中で寝ていたのか?


 まさかこの白濁スープって、こいつらの出汁なのか?


 まあ、そこはどうでもいいか。


 そんなことよりも、こいつらが目的の四文字ランクのシレモンのようだな。


 仕掛けには引っかからなかったけど、釣り上げることには成功したようだ!


 さあ、倒してしまおうか!



 俺はスローライフオーラ魔法で身体能力を強化し、獣頭の骸骨に突撃した。


 そして、剣で首を斬り落とした。


 獣頭の骸骨の体の骨が、なぜか粉々に砕け散った。


 頭部はそのまま床に転がっていった。


 これで倒せたかな?


「同志、こっちも倒せたゲスッス!!」


 鳥頭の骸骨も頭部以外の部分が粉々になって転がっている。


「やったな! と言いたいところだが、こいつはやけに弱くなかったか?」


「確かにそうゲスッスね。本当に四文字ランクゲスッスか?」


「どうなんだろう? ちょっと神鑑定をしてもらおうか……」


「むっ、まだ来るようである!」


「えっ!?」


「人間クセェぞオイコラァ!」


「何しやがるんだテメェオラァ!」


 また獣頭と鳥頭の骸骨が、スープから出て来た。


 しかも、うじゃうじゃと大量に!?


 いったい何体いるんだよっ!?


「いくぜオイコラァ!」


「死にやがれテメェオラァ!」


 獣頭と鳥頭の骸骨が、いっせいに襲いかかってきた。

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