第37話 海の家とヤシの木
ふぅ、食った、食った。
「リョールさん、ごちそうさま。とても美味しかったよ」
「お粗末様でした」
おや?
性格がいつもの感じになっているぞ。
料理が終わると元に戻るのか。
本当に変わった人だなぁ。
さて、次は何をしようかな?
今度は海の家のような建物の方に行ってみようか。
海の家にやって来た。
白いペンキの塗ってある木造の建物だ。
さわやかで涼しげだな。
ただ、壁面看板には『海の家、超獄炎の熱き血潮』という暑苦しい名前が赤い文字で書いてある。
もっと良い名前はなかったのか?
まあ、どうでもいいか。
では、中に入ってみよう。
中には木製のテーブルと椅子が並んでいる。
奥の方に注文カウンターとキッチンがあるようだ。
日本にあった海の家と同じような感じだな。
注文カウンターの前に来た。
壁にメニューが張り出されている。
何を売っているのだろうか?
ちょっと見てみようか。
『地獄のヘルファイア焼きまくりブラックうどん山盛り』
なんだこの暑苦しい料理は!?
焼きまくりブラックうどんって、ただ焦げているだけなんじゃないのか!?
『辛甘辛辛辛辛辛辛辛辛辛辛辛辛辛辛辛辛辛辛』
どういうことだよっ!?
これはどんな商品なんだ!?
もっと詳しく書けよ!?
『俺の流しそうめんの思い出の歌』
歌!?
注文したら歌ってくれるのか!?
そうめんは出てこないのか!?
『山盛り川の幸丼』
海の家なのに、海がまったくないんだな!?
山の家か、川の家で出せよ!!
『過ぎ去りし、夏の思い出。溶けた氷のかき氷』
溶けたかき氷を売るな!!
というか、それってただの甘い水だろ!?
かき氷を名乗るな!!
『焼きトウモロコシ』
……えっ!?
えええええええっ!?
普通!?
ナニコレ!?
圧倒的に普通じゃないか!?
なんでいきなり普通の商品が出てくるんだ!?
急にマトモになられてもコメントに困るぞ!?
『焼きトウガラシ』
トウガラシ!?
美味しいのか!?
辛そうだな!
『異値碁哀棲栗射武』
なんて読むんだよ!?
ん?
これはまさか『イチゴアイスクリーム』と読めば良いのか?
正解しているのか!?
どうなんだ!?
まあ、どうでもいいか!
『スイカの皮』
中身を売れよ!?
『トワイライト・パンデモニウム・ラビリンス・シャイニング・サンシャイン・トルネードレモネード』
意味が分からんぞ!?
『お値段はどれも一億よポイント』
高すぎる!?
売る気がないだろ!?
もっとマジメに商売しろよ!?
ダメだ、この店は。
焼きトウモロコシと焼きトウガラシ以外、ろくなものがない。
他に行こうか。
俺たちは海の家を出た。
他の海の家も見て回ったが、ろくなものがなかった。
なんで海の家でアイススケートの靴が売っているんだ!?
意味が分からなさすぎる!
もう海の家はいいか。
さて、次はどこに行こうかな?
そういえば、その辺に生えているヤシみたいな木は、シレモンなんだったっけ?
ちょっと見に行ってみようか。
倒せそうなら倒してしまって、よポイントを稼ごう。
木の近くに来た。
背が高いな。
樹高三〇メートルくらいあるぞ。
太さは八〇センチくらいか。
上の方に多数の黄緑色の実が
さて、こいつはどんなシレモンなんだろうな?
「おっ、人間が来やがったデスワ! よしよし、もう少し近くに来たら、実を投げ付けてやるデスワ!」
ヤシの木のシレモンから声が聞こえてきた。
えっ!?
何を言っているんだ、こいつは!?
自分の攻撃手段を言っちゃダメだろ!?
とりあえず、近付くのはやめよう。
「むっ、人間が止まりやがったデスワ! まさかこのワタクシの思惑に気付いたのかデスワ!?」
こいつの口は軽すぎるのではないか!?
「ふん、だが、問題ないデスワ! ワタクシの奉納部位が、下の方にある赤い小さな
確かに木の下の方に、それっぽいものがあるぞ。
でも、これは怪しいだろ。
「同志、どうしたゲスッス? あいつの奉納部位はあの赤いのらしいゲスッス。さっさとはがしてしまおうゲスッス」
「いやいや、いくらなんでも怪しくないか!? 自分の弱点をわざわざ言うわけないだろ!?」
「うむ、そうじゃな。いくらなんでも都合良すぎじゃ」
「まったくもってその通りなのである」
「もしかしたら、あれは敵を油断させるための作戦なのかもしれないな」
「うむ、それはあり得そうじゃな。まあ、もっとも、ワシには通用せんがな!」
「その可能性は高そうである」
「ここはもっと慎重にいかないと。サンクト、神鑑定を頼む。あいつの奉納部位を聞いてみてくれ」
「良いぜ! それじゃあ、いくぜ!!」
サンクトが儀式を始めた。
終わるまで、砂遊びでもしているか。
よし、砂の山とトンネルの完成だ!
なかなかの出来栄えだな!!
「おっ、来たぜ!!」
「どうだった?」
「あいつの奉納部位は、あの赤い鱗だぜ!!」
「えええええっ!? そんなバカな!?」
「なんじゃと!? あやつは真実を言っておったのか!?」
「アホとしか言いようがないのである」
こんなこともあるのか。
ダンジョンは訳の分からないことがたくさんあるなぁ。
では、あの赤い鱗をはいでみるか。
俺はスローライフオーラ魔法で身体能力を強化し、全速力で接近した。
そして、シレモンが攻撃してくるよりも速く鱗をはいだ。
「ぐあああああっ!! な、なぜワタクシの、ほうのう、ぶい、を……」
ヤシのシレモンはしゃべらなくなった。
どうやら倒したようだな。
さて、この木をどうするか?
こいつは売却できるのか?
先生に聞いてみようか。
すべて売れるらしい。
だが、幹は持って帰れそうにないので、実だけをアイテムボックスの中に入れた。
合計三四個も収穫できた。
その後、俺とシャワイヤーで周辺のヤシの木シレモンを倒して回った。
俺が合計二体、シャワイヤーは一体倒した。
ヤシの実を合計一〇〇個手に入れた。
アイテムボックスが満杯になったぞ!
「ハヤトよ、そろそろ休憩部屋に向かった方が良いのではないかのう」
「そうだな。では、行くか」
俺たちは休憩部屋に向かった。
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