第36話 半魚人

 海っぽい水たまりの近くにやって来た。


「それで何をするんだ?」


「おいらの炎で、この中にいるシレモンを焼き尽くすゲスッス!」


「そ、それはさすがに無理があるのではないか!?」


「やってみなければ分からないゲスッス!」


「ああ、そうだな。では、がんばってくれ!」


「任せておくゲスッス! それじゃあ、いくゲスッス!!」


 シャワイヤーが炎を放射した。



 水蒸気が出るだけだな。


 まあ、こんな大きな水たまりでは当然だろうけど。


 さて、そろそろシャワイヤーを止めようか。


「オイ、テメェ、何してくれてんだデスノ!?」


 聞き覚えのない声が聞こえた。


 そして、水たまりの中から巨大なナマズのような生物が二体出て来た。


 体長四メートルくらい。

 体幅九〇センチくらい。


 茶色っぽい体色をしている。


 体の側面に『半魚人』という青い文字が書かれている。


 なぜか獣のような黒い足が四本生えていて、陸上でも歩けるようだ。


 こいつらもシレモンなのか?


 半魚人ではなく、ほぼ魚ではないか?


 それか半魚獣とかじゃないのか?


 まあ、どうでもいいけどさ。


「何って、炎を放射しているゲスッス!」


「なんでそんなことをしているんだデスノ!? テメェのせいで暑くてたまらんだろうがデスノ!!」


「水中のシレモンをぶっ殺して、よポイントを手に入れるためゲスッス! 出て来てくれるなんて、都合が良いゲスッス!!」


「なんだと、テメェ、なめた真似をしやがってデスノ!! この半魚人様がぶっ殺してやるデスノ!!」


 半魚人という名前なのか。


 人っぽさがまったくないのに、なぜ半魚人なのだろうか?


 まあ、どうでもいいか。


 倒してしまおう。


 俺はスローライフオーラ魔法の剣で半魚人の頭を斬り落とした。


 もう一体はシャワイヤーのホースのヘッドとは逆の方から出て来た、長さ三〇センチくらいの槍の穂のようなもので、頭部をひと突きにして倒していた。


 シャワイヤーには、あんな武器が付いていたのか。


 すごいもんだな。



 さて、後始末をしようか。


 そういえば、こいつの奉納部位はどこなのだろうか?


 シャワイヤーに聞いてみた。


「知らないゲスッス」


「そうか。なら、先生に聞いてみようか」


 都合よく近くにいるからな。


「ヒゲが奉納部位だ。他の部分は腐ってなければ、買取所で買い取ってもらえる」


「腐ってなければですか。今は保存する道具を何も持っていません。持ち帰るのは無理そうですかね?」


「無理だな、確実に腐る。今日中に食べるか、捨てるかした方が良いだろう」


「仕方ないですね。では、調理して食べましょうか。先生も食べますか?」


「私は食物を摂取する必要はない」


「そうなんですか」


 まあ、人形だし当然か。



 では、さばくか。


 と言いたいところだが、ナマズのさばき方ってどうやるのだろうか?


 これも先生に聞いてこようかな?


「また美味しそうなものを持っている……」


「見事な大きさの魚…… 魚のような何かですね」


 クゥーネとリョールがやって来た。


「おいらが釣ったんだぜゲスッス!!」


「ここにはこんな大物がいるのか。覚えておかなくては……」


「それはすごいのですね! ところで、それをどうするのですか?」


「持って帰れそうにないから、料理して食べようとしていたところだ」


「そうなのですか。よろしければ、わたくしがさばきましょうか?」


「えっ!? 良いのか!?」


「はい、実はわたくし生前からの料理人なんです。腕には自信がありますよ!」


 リョールも転生者だったのか。


「では、お願いして良いか? 実はさばき方がよく分からなかったんだよ」


「おまかせください!」


 リョールがそう言うと、リョールの周囲に半魚人でも載せられるような大きな調理台とまな板が現れた。


 しかも、そのまな板の上には半魚人が載っている。


「な、なんだそれは!?」


「これはわたくしの『お得な調理器具セット魔法』で出した調理器具です」


「それはどんな魔法なんだ?」


「名前通り、魔法でできた調理器具が出現する魔法です。とても便利なんですよ」


「確かに便利そうだな。いくらで購入したんだ?」


「これはカスクソ邪神にもらったものなので分かりません」


「そうなのか」


 転生者には特典が必ず付くみたいだな。



 リョールが半魚人をさばき始めた。


 見事な包丁さばきだ。


 いや、これは体さばきになるのか?


 どちらなんだ?


 まあ、どうでもいいか。


 とにかく、見事に半魚人がさばかれていくぞ!!


 さすが料理人だな!!


「うひっ、うひひひひひひひひひひひひひひひひひっ!!!!!」


 な、なんだ!?


 突然リョールが笑い出したぞ!?


「美味しく、美味しくしてやるぜぇぇぇっ!!! ひーっひっひっひっひっ!!!」


 なんだあれは!?


 怪しすぎるぞ!?


「ひょーっひょっひょっひょっひょっひょっひょっひょっ!!!!!」


 リョールが笑いながら料理をしている。


 いったいどうしてしまったんだ!?


 ちょっとクゥーネに聞いてみよう。


「あれは癖らしい。料理をしている時は、いつもあんな感じ」


「そ、そうなのか……」


 変な癖だなぁ。


 普段とのギャップがすごすぎるぞ。



 その後、半魚人は美味そうな塩焼きになった。


 二年生の食事を取れる人たちと一緒に食べた。


 ほど良く脂が乗っているうえに、焼き加減と塩加減が絶妙で、とても美味しかった。


 さすがは料理人、見事な腕前だな!


 ただ、食べている間中、クゥーネに凝視されていたけどな。


 早く食べれるようになって欲しいものだ。

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