第35話 ダンジョン地下三階

 そういえば、自己紹介をしていなかったな。


 俺たちはシャワーに自己紹介をした。


「おいらは『シャワイヤー』ゲスッス! 炎を放射する『シャワー魔法』を使えるゲスッス! よろしくゲスッス!!」


「分かったよ。よろしくな、シャワイヤー!」



 そして、俺たちは授業を再開した。


 ダンジョンをしばらく歩いていくと、下り階段があった。


 相変わらずのレッドカーペットが敷かれた豪華な階段だ。


 場違い感がすさまじいな。


「生徒諸君、今日は地下三階を探索する」


「分かりました」


「では、行こうか」


 俺たちは階段を下りた。



 ここが地下三階か。


 広大な空間だな。


 どこぞのドーム何十個分あるのだろうか?

 と思ってしまうくらいの広さだ。


 右手に海のように見える、巨大な水たまりがある。

 波もあるようだ。


 正面には白い砂浜が広がっている。


 左手には海の家みたいな建物が多数ある。

 ヤシのような木も多数生えている。


 奥の方に高級ホテルのような大きなビルが見える。


 ここはダンジョンというより、海辺と呼んだ方が良さそうな場所だな。


「生徒諸君、ここが地下三階だ。ここに関しては注意点が複数ある。まずはそこの海のような場所に関してだ。あの中には大量のシレモンがいるため遊泳禁止だ」


 そうだったのか。

 海水浴は無理なのか。

 ちょっと残念だな。


「水中のシレモンと戦いたい場合は、釣り上げるのがオススメだな」


 釣りか。

 面白そうだな。


 でも、釣り具を持ってないから無理だな。


「おっ、そこの人間さん方、釣りがしたいようだねゲフォ」


 聞き覚えのない声が聞こえた。


 声のした方を向くと、妙な格好をした人型の何かがいた。


 身長二メートルくらい。


 頭をスッポリと覆えるサイズの巻貝をかぶっている。


 真ん中に黒い文字で『海人かいじん怪人かいじん貝人かいじん』と書かれた白いTシャツに、茶色のハーフパンツ、黒いサンダルを身に着けている。


 筋骨隆々の男性体型で、日焼けした黒っぽい肌をしている。


 こいつはシレモンのようだな。


 何をしに来たのだろうか?


「うちの店に良い釣り竿があるゲフォ! 寄って行かないかゲフォ!」


 釣具店の営業に来たのか。


「それっていくらなんだ?」


「ここのシレモンが釣れる竿は、一本十万よポイントで売っているゲフォ!」


「十万!? 高すぎっ!? 買えないぞ!!」


「一日レンタルなら、千よポイントゲフォ!」


 それでも高いぞ!?


 これはこいつを倒して、戦利品としてもらってしまう方が良いのではないか?


「そいつの店の品は、すべてシレモンだ。買わないように」


 そうなのか!?

 それって詐欺なんじゃないか!?


「お客さ~ん、商売の邪魔は困るよゲフォ! うちの商品はみんなマトモなシレモンたちだよゲフォ!!」


 マトモなシレモン?

 それは要するに襲ってくるのではないか?


「投げた針が戻って来て、体に突き刺さる竿なんぞ使い物にならん」


 ええっ!?

 そいつはひどくないか!?


「それがマトモなシレモンというものゲフォ!」


 まあ、確かにそうなのかもしれないな。


 そんな竿はいらないけど!



 さて、あいつをどうするか?


「同志! ここはおいらに任せて欲しいゲスッス! あんなヤツ、ひとひねりにしてやるゲスッス!!」


「えっ!? まあ、良いんじゃないかな?」


「では、いくゲスッス!!」


 シャワイヤーが炎を放射した。


「ゲフォォォォォォォォォッ!!!!!」


 釣具店のシレモンは、巻貝以外焼き尽くされた。


 おおっ、こいつはすごい!

 驚異的な威力だな!


 ただ、これでは売却できないな。


「どうだ、同志ゲスッス! おいらの強さはゲスッス!!」


「ああ、すさまじい強さだな」


「そうだろゲスッス! おいらがいればスローライフ許可証なんて楽に取れるゲスッス!!」


「そいつは頼もしいな。ただ、金は稼げなさそうだけどな」


「どういうことゲスッスか?」


「シレモンの奉納部位以外を買い取ってくれる場所があるんだよ」


「そんなのがあるゲスッスか!?」


「ああ、だから炎を使う時は慎重にな」


「分かったゲスッス!」


「ところで、あいつの奉納部位はどこなんだ?」


「それは頭の巻貝ゲスッス」


「そこだけは無事か。なら、よポイントは手に入るぞ。良かったな」


「不幸中の幸いゲスッス!」



「では、授業を続ける。周囲に生えている木はシレモンなので、不用意に近付かないように」


 あれもシレモンなのか。


「それから奥に見える巨大建造物以外の建物は、すべてシレモンの店だ。売っている品もすべてシレモンなので買わないように」


「では、あの巨大な建物はなんなのですか?」


「あれは休憩部屋だ。あそこが今日の寝床になる」


 そうだったのか。


 豪華そうな休憩部屋だな!


 こいつは楽しみだ!


「では、これから自由時間とする。この地下三階を好きに探索してみろ。ただし、他の階には行かないように」


 自由時間か。


 何をしようかな?


「暗くなってきたら、休憩部屋に集合するように」


「暗くなってくるのですか?」


「ああ、ここには昼夜が存在し、時間経過で明るさが変化する」


 へぇ、そうなのか。


「他の階も変化するのですか?」


「いや、そうとは限らない。場所による」


 ダンジョンは不思議な場所だなぁ。


「質問はもうないな? では、解散!」



 さて、何をしようか?


「同志、おいら良いことを思い付いたゲスッス!」


「えっ!? どんなことだ!?」


「まずは水たまりの近くに行くゲスッス!」


「ああ、分かったよ」


 いったい何をするのだろうか?

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