第34話 モンスターをテイムっぽい何か

 赤い線のあるシャワー型のシレモンに、なぜスローライフをしたいのか聞いてみた。


「ダンジョン勤務のシレモンはつらいゲスッス!!」


「そうなのか」


「仕事時間は自分の好きなように選べるゲスッス! でも、怠けているとスローライフ邪魔し隊に怒られるゲスッス!!」


「そうなんだ」


 結構自由なんだな。


「毎日ダンジョンの見回りをしたり、人間を襲ったり、スタッフルームで本を読んだり、温泉に入ったり、植物園でくつろいだり、映画を見たり、トレーニングしたり、マッサージしたり、娯楽施設で遊んだりするくらいしかやることがないゲスッス!」


「大変なんだな」


 最初のふたつだけだがな!!


 スタッフルームの中って、かなり充実しているんだな!


「しかも、なぜかこのダンジョンから出られないゲスッス!」


「それはひどいな」


「こんな生活をするくらいならシレモンをやめて、自由にスローライフをしたいゲスッス!!」


「あ~、分かる、分かる」


「分かってくれるゲスッスか!?」


「ああ、分かる。俺もスローライフをしたいからな!」


「おおっ、君は同志ゲスッス!!」


「ああっ! お互いにがんばろう!!」


 赤い線のあるシャワーと意気投合してしまった。



「ところで、シレモンって何をやってよポイントを入手しているんだ?」


「見回りと人間との戦闘ゲスッス」


 人と変わらないんだな。


「後どのくらいためたらシレモンをやめられるんだ?」


「そういえば、最近調べてなかったゲスッス。ちょっと見てみるゲスッス! ワライトールショッピングウィンドウオープン!!」


 シャワーの前にウィンドウが出現した。


 えっ!?

 それシレモンにも出せるんだ!?


「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」


「ど、どうしたんだ!?」


「すでにたまっていたゲスッス!!」


「ええっ!? そいつはめでたいな! おめでとう!!」


「おめでとうゲス!」


「みんなありがとうゲスッス!! さっそく購入するゲスッス!! ……よし、購入完了ゲスッス!! これでおいらはシレモンではなくなったゲスッス!!」


「何も変わらないように見えるのだが……」


「シレモンか聞いてみれば分かるゲスッス!」


「そうだな。では、質問してみよう。君はシレモンなのか?」


「……おおっ、勝手に口が動かないゲスッス!」


 質問されたら、勝手に名乗るようにされているということなのか。


「これでおいらは自由ゲスッス! さあ、スローライフ許可証を入手しに行くゲスッス!!」


「ああ、がんばれよ!」


「応援しているゲス!!」


「ありがとうゲスッス! では、さらばゲスッス!!」


 赤い線のシャワーは部屋を出て行った。



 さて、休むとするか。


 腹が減ってきたから、飯を食おうかな。


 ディディに水と缶詰を出してもらって食べた。


 缶詰の中はカレー味の雑炊だった。


 結構美味しいかった。


 ただ、食べている最中ずっとクゥーネに凝視されていて、非常に食べづらかった。


 その後、買っておいた寝具を出して寝た。



 次の日。


 おはようございます。


 今日もダンジョン探索だ。


 準備をしようか。


 まずは朝食をしっかり食べないとな!


 ディディに水と缶詰を出してもらった。


 今回のは『野菜と卵とリングァエルの足の雑炊』だ。


 なかなか美味しそうだな。


 では、いただきます。


「また美味しそうなのを食べてる」


 またクゥーネがやって来た。


「そんなに見られていると食べづらいのだが……」


「美味しそうだから仕方ない」


「そもそもなんで食べれないんだ? 見た目通り、全身が金属なのか?」


「その通り」


「なんでそんな体になっているんだ?」


「生まれつき」


「えっ!? ギャグ系魔法を購入して、そうなったわけではないのか!?」


「前世で死んだ後、カスクソ邪神に会って、こんな体にされた」


「転生者だったのか。なんでそんなことになったんだ?」


「病気にならない体が欲しいと思っていたから」


「……前世は病気で亡くなったのか?」


「その通り。食べすぎ、飲みすぎで病気になった」


 生活習慣病かよっ!

 自業自得じゃないか!!


「だから、今世では病気にならない体で、美味しいものを食べまくるのがわたしの目的」


 食い意地張りすぎだろ!?


「でも、食えないんだろ?」


「よポイントがあれば、食べられるようになる。ダンジョンならよポイントが稼げるらしい。それにダンジョンの中には、美味しいものがあるというウワサもある」


「そうなのか。それでここに来たというわけか」


「その通り」


「それはそうと、俺の食事を眺める必要はないと思うのだが?」


「美味しそうだから仕方ない」


 ジロジロ見られてうっとうしかったが、なんとか全部食べた。



「では、そろそろ出発する」


 先生がそう言って、部屋を出て行った。


 俺たちは後に続いた。



「同志! ちょっと聞きたいことがあるゲスッス!!」


 部屋を出たら赤い線あるシャワーに呼び止められた。


 昨日の元シレモンだ。


「どうしたんだ?」


「許可証を入手するためのダンジョンはどこにあるんだゲスッス!?」


「場所を知らなかったのかよっ!?」


「いや、スタッフルームにある本で見た覚えがあるけど、忘れたゲスッス! 読み直そうとしたらスタッフルームに入れなかったゲスッス!!」


「ああ、もうシレモンではないからか」


「その通りゲスッス! それでどこにあるゲスッスか!?」


「ここから東の方向にある、チクイスロードルート国の中にあるらしいぞ」


「それって遠いゲスッスか?」


「地図で見た限りでは結構遠かったなぁ。海を渡る必要があるし」


「海ゲスッスか!? おいら海を渡る手段がないゲスッス!!」


「お金を払って誰かに連れて行ってもらうなり、自分で飛ぶ魔法を購入するなりすれば良いのでは?」


「おいらお金は持ってないし、飛べないゲスッス! よポイントはまったく残ってないゲスッス!!」


「それは…… なんとか稼ぐしかないな」


「こうなったら同志に付いて行くゲスッス!」


「えっ!? なんでそうなるんだ!?」


「同志はダンジョンの奥に行くんだろゲスッス? おいらも手伝うから金かよポイントをくれゲスッス!!」


「それなら俺たちと一緒にチクイスロードルート国に行くか? 今すぐに行くわけではないけどな」


「良いゲスッスか!?」


「ああ、その代わり手伝ってくれよ」


「ありがとう、同志ゲスッス!!」


 というわけで、シャワーが仲間になった。

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