スローライフをするためには神の許可が必要！？まずはダンジョンを突破せよ！？

第30話 面倒くさいボス

　斬り付けては再生される。

　しばらくの間、それを繰り返した。

　おのれっ、いったいどこが奉納部位なんだよっ！？

　ああ、もういい加減にしてくれ！！

　俺は左の二の腕を斬った。

「ぐっ、ぐああああああああっ！！！」

　えっ！？

　ボスが突然叫び出したぞ！？

「こ、この私が、こんな、ヤツらに……」

　そして、うつ伏せに倒れた！？

　これはもしかして、倒したのか！？

　剣の先で突いてみたが反応はなかった。

　おおっ！！

　やったぞ！！

　ようやく倒したんだな！！！

　素晴らしいぞ、俺！！

「ハヤトよ、あやつも助けてやった方が良さそうじゃぞ！」

「えっ！？」

　ギターの人は未だに振り回されていた。

　えええええっ！？

　なんでだよっ！？

　ここのボスは人を振り回すのが趣味なのか！？

　それともギターを振り回すのが趣味なのか！？

　まあ、そんなのどうでもいいか！

　さっさと助けよう！！

　俺はもう一体のボスに接近し、左の二の腕を斬った。

　よし、これで倒し……

　はぁっ！？

　えええええっ！？

　なんでだ！？

　どういうことなんだよっ！？

　再生しやがったぞ！？

　まさかこいつは個体ごとに奉納部位が違うのか！？

　そんなシレモンもいるのかよっ！？

　なんて面倒くさいんだ！？

　これはまた全身を斬ってみるしかないのか！？

　面倒くさすぎるぞっ！！！！！

　クソッタレがぁぁぁっ！！！

　またしばらくの間、斬っては再生されるを繰り返した。

　そして、右脇腹を斬り付けた時のことだった。

「うぐっ！？　ぐおおおおおおおおっ！！」

　ボスが断末魔の叫びとともに倒れた。

　や、やった……

　やっと倒した……

　つ、疲れた……

　ちょっと休もうか……

　あっ、そうだ。

　休んでいる間に、このボスを神鑑定してもらおうか。

　なぜ奉納部位が違うのか知りたいしな。

「分かったぜ！　ハヤトはあいつの様子を見てやれよ！！」

　サンクトがそう言って、儀式を開始した。

　あいつ？

　ああ、ギターの人か。

　そういえば、ずっと振り回されていたけど大丈夫なのかな？

　さらに、俺が攻撃を仕掛けた時に投げ捨てられていたしなぁ。

　これはもうダメなんじゃないか？

　とりあえず、声をかけてみるか。

「おおーい、生きてるか～？」

　返答なし。

「おい！　ギターの人！　死んでいるならそう言ってくれ！！」

　返事がないな。

　意識はないようだ。

　呼吸はしているのか？

　していないようだけど、そもそもこいつは呼吸をするのかな？

　どう見ても肺なんてなさそうだしなぁ。

　しないのかもしれないな。

　脈はあるのだろうか？

　俺はギターの人の手首に触れてみた。

　脈はないな。

　そもそもこいつに脈なんてあるのだろうか？

　心臓自体がなさそうだし、血があるのかも怪しいよな。

　あれ？

　結局どうやって無事を確認すれば良いんだ？

　気が付くまで待つしかないのか？

　いや、ここはプロの力を借りようか。

　ここは学校なのだから、校舎内に保健室があるだろう。

　そこに連れていけば良いか。

　後始末が終わったらそうしよう。

「おっ、ハヤト、来たぜ！！」

「ああ、分かったよ。結果はどうだったんだ？」

「このシレモンの奉納部位は、体のどこかに生えている濃い目の産毛だそうだぜ！」

「えええええっ！？」

　なんだそりゃぁぁっ！？

　なんでそんなものにしているんだよっ！？

　おのれっ、カスクソ邪神め！！

「ハヤトよ、産毛を探した方が良いのである」

「それもそうだな」

　俺たちは産毛を探した。

　なんとか二体分の産毛を発見できた。

　長さ一センチくらいの黒い毛だ。

　ここのボスを倒すには、戦闘中にこいつを探さなければいけないのか。

　これはひどすぎるだろ！？

　何か効率よく見つける手段はないものか？

　では、解体してしまおうか。

　アイテムボックスにボスのバケツ、腰蓑、皮、砂を入れた。

　よし、これで後始末は終わったな。

　では、保健室を探しに行こうか。

　ギターの人を背負って、ダンジョンの入り口に向かった。

　ダンジョンの入り口に戻って来た。

「むっ、そこの君、何を背負っているのかね？」

　入り口の近くにいた教師人形にそう聞かれた。

　俺は事情を説明した。

「そうか。なら、この生徒は私が保健室に連れて行こう」

　ギターの人を教師に渡した。

「あの、その人は無事なんですか？」

「おそらくだが、問題ないだろう。ギャグ系魔法を購入した者はしぶとくなるからな」

「そ、そうなんですか……」

　そんなことが起こるのか！？

　魔法は不思議がいっぱいだなぁ。

　さて、今日は疲れたし、奉納と売却をして帰ろうかな。

　では、まずは奉納からだ。

「ハヤトよ！　奉納一発ギャグを思い付いたぞい！！」

「そうなのか！？　なら、やってみてくれ！！」

「うむ、任せておくのじゃ！！」

「おっ、奉納一発ギャグをやるみたいだぞ！」

「ちょっと見ていこうか」

「ほう、面白い。貴様の力を見せてもらおうか」

「くっくっくっ、我の前で行うとは良い度胸だ」

　ん？

　周囲にいた人たちが集まって来たぞ。

　二〇人くらいいる。

　あんたら暇なのかよっ！？

　まあ、どうでもいいけどな！

「では、ゆくぞ！」

　俺は所持していた奉納部位をすべて奉納した。

「奉納一発ギャグ『メタルシルバー筏モヒカンヘアー』じゃぁぁぁっ！！！」

　シチローが俺の頭の上に乗って、そう叫んだ。

　おい、ちょっと待て！？

　それ前にもやらなかったか！？

　似たようなギャグをもう一回やっても良いのか！？

　おっ、ウィンドウが出たぞ。

「どうじゃった！？」

「おおっ！！　一二〇よポイントもらえたぞ！！　すごいじゃないか！！」

　過去最高だな！

　これは人前でやったからなのか！？

　他は店員たちが一体、一〇よポイント。

　ボスが一体、五〇よポイントだった。

　合計ニ七〇よポイント入手した。

「むむむ……　イマイチじゃな。あれなら百京よポイントくらいもらえると思ったのじゃが……」

「そんなには無理だっての！？」

「いやあ、君たち見事な奉納一発ギャグだったよ！」

　誰かが拍手をしながら声をかけてきた。

　俺は声のした方を向いた。

　えっ！？

　な、なんだこいつは！？