第29話 いつの間にかいるギターと増えるボス

 みんなと相談してみようか。


「ぎゅおおおおおおっ!! ぎょぎゃああああああああっ!!」


 ギターの人がうるさいから、少し離れて話し合おうか。



「うーむ、そうじゃな…… 危険ではないか? ワシはもっと鍛えてからでも良いと思うぞ」


「ここは危なかったら逃げられるって、教師が言っていたじゃねぇか! 一回戦ってみても良いんじゃねぇか?」


「一度は試してみるべきである」


「面倒なんでやめときましょうよ~。のんびりするのが一番ッスよ~」


「意見が真っ二つに分かれたな」


 さて、どうするか?


 うーむ、ここは逃げる準備は万全にしておいたうえで、戦ってみようかな。


 うん、そうしよう。


「よし、では、戦ってみよう!」


「うむ、分かった。ワシも覚悟を決めよう」


「よっしゃっ!! やってやろうぜ!! 俺君は戦えないけどな!!」


「応援は任せるのである」


「ハヤトの兄さん、がんばってくださいね~」


「キューストもがんばる側なんだよ!! いざとなったら脱力する能力を使ってもらうぞ!」


 効くか分からないけどな。


「ええ~、面倒ッスよ~」


「そう言わずに頼むよ!」


「人使いが荒いッス~」



「では、行くぞ!!」


 俺は扉を開けた。


「おいおい、あんたら何をやっているんだよ!?」


 突然ギターの人に声をかけられた。


「何をって、ボスと戦おうとしているんだけど、それがどうかしたのか?」


「吾輩がスペシャルエヴォリューショングレートしている最中だろうが!!」


 なんだそれは!?

 意味が分からんぞ!?


「ええと、それはどういうことなんだ?」


「吾輩がボスと戦うために気合を入れていたのだ!!」


「ああ、そういう意味だったのか。なら、お先にどうぞ」


「あんたらのせいで興がそがれた。今日はやめておく」


 面倒なヤツだなぁ。


「そうなのか。なら、俺たちが入らせてもらうぞ」


 俺たちはボス部屋に入った。


 逃げやすいように扉は開けっぱなしにしておいた。



 ええっ!?

 な、なんでだ!?


 なんでボスが二体もいるんだ!?


 前は一体だったはずなのに、なんで増えているんだよっ!?


 これは卑怯すぎるんじゃないか!?


「敵は二体か。片方は吾輩がやろう。もう片方は任せる」


 ギターの人にそう言われた。


「えっ!? ちょっと待て!?」


「なんだ? 他の策があるのか?」


「いや、そうじゃなくて、なんでここにいるんだよっ!?」


「気が変わったからに決まっているだろ! 決して、ひとりで戦うのが怖かったわけではないからな!!」


「ええ……」


 こいつ面倒くさすぎるぞ!?


 変なのに絡まれてしまったなぁ……


 ん?

 あれ?


 もしかして、こいつが入って来たからボスが増えたのか?


 どうなのだろうか?


 後で先生に聞いてみようか。


「ゆくぞ!!」


 ギターの人がボスに突撃して行った。


 あっちはおまかせしようか。



 では、俺たちも戦おう。


 まずはどうするか?


 とりあえず、キューストの能力が通用するか試してもらおう。


「仕方ないッスね~」


 キューストが渋々ボスに向かって行った。


 これが効いたら楽なんだけどなぁ。


「そこのお方、昼寝でもしませんか~。リラックスしましょうよ~」


「…………………………」


 ボスは腕を組んだまま、身じろぎひとつしなかった。



「あれはダメッスね~」


 キューストが戻って来て、そう言った。


「そうか。お疲れさん、ありがとう」


 世の中そんなに甘くはないか。


 では、次はどうしよう?


 おっ、良いことを思い付いたぞ!


 ここはギターの人の戦いぶりを見物させてもらおうか!


 それを踏まえて対策を考えよう!



 な、なんだあれは!?


 ボスの腰蓑こしみのの中からむちのようなものが一本出ていた。


 長さ二〇メートルくらい、太さ三センチくらい。

 砂のような質感をしている。


 その鞭をギターの人の足に巻き付けて、振り回している。


 あれが先生の言っていた砂の鞭なのか!?


 なんで腰蓑の中から出て来るんだよっ!?


 まあ、そこはどうでもいいか!


 それよりも、あのギターの人は大丈夫なのだろうか?


 ちょっと声をかけてみるか。


「おーい、大丈夫かー? 援護は必要かー?」


「そんなものは不要だ! そっちのヤツに集中しろ!!」


 不要なのか。


 なら、そうしよう。



 ボスの攻撃方法は、あの砂の鞭だけなのか?


 ああ、そういえば、近接格闘術も身に付けていると先生が言っていたっけ。


 このふたつなのかな?


 では、どう戦うか?


 うーむ、そうだなぁ。


 そういえば、あいつの奉納部位はどこなのだろうか?


 調べておけば良かったな。


 まあ、分からないものは仕方ないか。



 さて、どうしよう?


 ひとりで突撃するとああなるから、シチローと連携して攻撃してみようか?


 シチローに隙を作ってもらって、俺がとどめを刺す感じにすれば良いかな?


 よし、それでいこうか!


 シチローに作戦を伝えた。


「人使いが荒いのう……」


 シチローは文句を言いながら、ボスの顔面に突撃して行った。


 ボスは突撃を回避した。


 そして、腰蓑の中から鞭を出し、シチローを攻撃した。


 しかし、素早く飛び回るシチローに当てることはできなかった。


 おおっ!

 いいぞ、シチロー!!


 後は俺がヤツの隙を狙って、斬りかかれば良いだけだな!


 俺はボスがシチローに気を取られている隙に接近し、スローライフオーラ魔法の剣で背中をけさ斬りにした。


 ボスの体を深々と斬り裂いた。


 やったか!?

 な、なんだと!?


「甘いズナ! この程度でやられる私ではないズナ!!」


 ボスがそう言うと、切り傷がすぐさま元通りになった。


 な、なんという再生力だ!?


 あんなの反則じゃないのか!?


 くそっ、どうすれば良いんだ!?


 とりあえず、もう一回斬ってみるか!


 今度は脇腹に部分から横一文字に斬り裂いた。


 ボスは真っ二つになった。


 これならどうだ!?


「フハハハハッ! 無駄ズナ! そんな攻撃効かないズナ!!」


 だが、ボスはすぐさま再生した。


 ええっ!?

 いったいどうすれば良いんだよっ!?


 って、シレモンなんだから奉納部位を破壊すれば良いんだよな!?


 問題はいったいどこなのかということだが……


 やはり目立つ頭のバケツか腰蓑なのか?


 俺は腰蓑、バケツの順で斬り裂いた。


 どちらを斬っても再生された。


 なんじゃそりゃぁっ!?


 いったいどこが奉納部位なんだよっ!?


 おのれっ!!

 こうなったら、全身を斬り刻んでやるぜ!!


 くらいやがれ!!


 俺は身体能力を強化し、ボスの攻撃を回避しながら体の各部を斬り付けていった。

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