第25話 最先端のファッション?

「らっしゃっせダギャ~! これがオシャレの最先端の服ダギャ!!」


 また何かがやって来た。


 全身が黒い毛でおおわれている人型の何かだ。


 身長は二メートルくらい。


 手に殺虫剤のようなスプレー缶を持っている。


 服はどこにあるのだろうか?


「服なんてどこにもないじゃろ! お主は何を言っておるのじゃ!?」


 ナイスなツッコミだ、シチロー!!


「お客さ~ん、何を言っているダギャ? 服なら私が着ているでしょうダギャ?」


 あの毛を服だと言っているのかよっ!?


 体毛は服じゃないだろ!?


「どう見ても、ただの毛じゃろうが!!」


「これは服ダギャ! この『吹きかけたところから毛が生える薬っぽい服』を着ているダギャ!!」


 毛むくじゃらの何かが、手に持ったスプレー缶を見せつけながらそう言った。


 それは服ではなく、毛生え薬だろ!?


 効果はすごいな!!


「どうです、お客さんダギャ? 買いませんかダギャ? お値段は五千兆よポイントですよダギャ?」


 高すぎるだろっ!?


 買えるわけないだろうがっ!?



「いらっしゃましダギュ~。お客様、こちらの最先端の服はいかがですかダギュ?」


 また変なのが寄って来たぞ。


 全身に緑色のうろこを付けた人型の何かだ。


 身長は二メートルくらい。

 男性のような体型をしている。


 服?

 もしかして、その鱗のことを言っているのか?


 鱗って服なのか?


「お値段は一京よポイントになりますダギュ」


 一京!?

 高いって!?


 買えるわけないだろ!?


「らっしゃいダギョ~。お客さん、この最先端の服を買いませんかダギョ?」


 またまた何かが寄って来た。


 黒い色の巨大なヤドカリだな。


 成人男性が入れそうなくらいの大きさの白い巻貝を背負っている。


 なんだこいつは!?


 どれが服なんだ!?


 まさかその巻貝のことを言っているのか!?


「お値段は、な、なんと、驚きの五京よポイントダギョ!」


 確かに驚きだな!!


 高すぎて買えるわけないだろ!?


「ラッシャッセェェェッダッピ!!! お客さん、この最先端の『世界一涼しいかもしれない服』はいかがッスかダッピ!!」


 またまたまた何かが寄って来た。


 何も着ていない白いマネキンだ。


 身長は二メートルくらい。

 筋骨隆々の男性体型だ。


 おい、ちょっと待て!!

 服はどこにあるんだよっ!?


 お前は何も持っていないし、着ていないだろ!?


 まさか何も着ていないから、世界一涼しいとでも言いたいのか!?


「お値段はたったの一よポイントダッピ!!」


 安っ!?

 いきなりすさまじく値段が下がったな!!


 いったいどういうことなんだ!?


 安すぎてウサンクサイぞ!!


 買う気にはならないな!!



「オイ、テメェら、商売の邪魔するんじゃねぇダッペ!!」


「あぁっ!? なんだと、テメェ、やんのかダギャ!?」


「ここは俺様の縄張りダギュ! 貴様らはさっさと消え失せるダギュ!!」


「あぁっ!? 何を言ってんだダギョ!? ここは俺の縄張りダギョ!! 出て行くのはテメェらだダギョ!」


 縄張り争いが始まったぞ。


 ここは商売の激戦区みたいだな。


「おいおい、ここはオレの縄張りだろダッピ? 君たちが出て行くんだよダッピ!」


「うるせぇぞ、詐欺師ダッペ!!」


「全裸詐欺師は消え失せろダギャ!」


「まともな商品を用意してから言えダギュ!!」


「さっさと『シレモン公正取引委員会っぽい集団』に成敗されろダギョ!」


 やはり全裸で詐欺師だったのか。


 シレモン公正取引委員会っぽい集団ってなんだ?


 名前通りの組織なのかな?


 まあ、どうでもいいか。


「生徒諸君、シレモンはあのように縄張り争いをすることがある」


 そういえば、リングァエルたちもしていたな。


「このような時はチャンスだ。素早く倒してしまおう」


「分かった、わたしがあのヤドカリみたいなのを食べる」


「クゥーネさんは食べれないでしょ! わたくしはあの鱗のシレモンと戦います。鱗取りには慣れているので」


 クゥーネとリョールがシレモンに向かって行った。


「ハヤトよ、ワシらはどれにするのじゃ?」


「そうだな。なら、あの毛むくじゃらのヤツで良いか」


 面白そうなものを持っているしな!


「では、残りは私が倒しておこう」



 さて、どうやって倒すか?


 ここはスローライフオーラ魔法を使ってみようか。


 俺は身体能力を上げ、剣を出し、毛むくじゃらのシレモンに突撃した。



「邪魔な連中ダッペ!! テメェらの服はここの服に及ばねぇんだから、さっさと消えろダッペ!」


「あぁっ!? なんだと、テメェ、そんなセンスのない服で何言ってんだダギャ!?」


「そうダギュ! そんな時代遅れの服で何を言っているんだダギュ! 貴様らはさっさと消え失せろダギュ!!」


「テメェらの服はこの場所にふさわしくねぇんだよダギョ! さっさと失せろダギョ!!」


「はぁ、醜い争いダッピ。最高の服はうちの服に決まっているのにダッピ。さっさと出て行って欲しいダッピ」


「テメェの服なんて、存在しないだろダッペ!!」


 シレモンたちはまだ言い争いをしていた。


 その後、俺たちの不意打ちが成功し、すべてのシレモンを倒した。


 スローライフオーラの剣は素晴らしい切れ味で、毛むくじゃらのシレモンの胴体を簡単に両断できた。



 さて、解体するか。


 ん?

 この毛むくじゃらも中は緑色の綿なんだな。


 そういえば、このスプレー缶はもらっても良いのだろうか?


 先生に聞いてみた。


「シレモンの持ち物は倒した者がもらっても良いことになっている」


 なら、この毛生え薬は俺のものなのか。


「この缶は売れますか?」


「ああ、買取所で買い取ってもらえる。ただ、あまり高くはないがな」


「そうなんですか? 需要はありそうですけどねぇ?」


「一日経過すると毛が抜けるからな。さほど人気はない」


「そうなんですか」


 永久に生えたままなら、もっと人気が出るのになぁ。


 まあ、いいか。


 後で売ろう。


「よポイントに変換することはできませんか?」


「それは不可能だ」


 よポイントで取引していたのに不可能なのかよっ!!


 ケチだなぁ。

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