第24話 スローライフオーラ魔法

 結局、魔法の情報を全然得られなかったな。


 仕方ない、試しに使ってみるか。


 実戦でいきなり使用するのは危険だからな。


 よし、まずは武器を形成してみようか。


 剣よ、出て来い!!

 と思えば良いのかな?


 うっ!?

 何かが体から抜け出たような感じがしたぞ!?


 今のがスローライフオーラなのか!?


「ハヤトよ、剣が出現しておるぞ!」


「えっ!?」


 おおっ、本当だ!


 いつの間にか右手に剣を持っているぞ!!


 長さ一メートルくらいのロングソードだ。


 色は緑の半透明。


 今の俺でも軽々持てるくらいの重さだな。


 刀身の中央に紫色の文字で『すろ~らいふ』と縦書きされている。


 なんでこんな文字が書いてあるんだ!?


 カッコワルイだろっ!?


 まあ、そんなのどうでもいいか。


 デザインよりも切れ味の方が重要だよな。


 試し斬りをしてみよう。


 斬っても良いものはないかな?


 って、室内にはないよな。


 外に行って、何か探してみようか。



 雑草しか見つからなかった。


 仕方ない、これで良いか。


 おおっ、斬れる!

 斬れるぞ!!


 たいして力を入れていないのに、スパスパ斬れる!


 こいつはすごいもんだな!


 これなら実戦でも使えるかもしれないぞ!!



 あっ、剣が消えた。


 一〇分経過したのか。


 本に書いてある通りだったな。



 その後、他の武器も出してみた。


 槍や斧も出すことができた。


 銃も出すこと自体はできたが、弾を撃つことはできなかった。


 俺自身が内部の機構を理解していないからなのかもしれない。


 出て来た武器の最も目立つ場所に、必ず『すろ~らいふ』と書いてあった。


 なんでだよっ!?

 なんでこんなデザインなんだよっ!?


 意味が分からないぞ!



 さて、次は身体能力を強化してみようか。


 おおっ!

 これはすごい!


 普段よりもかなり速く走ることができるぞ!!


 素晴らしいな!!


 ただ、時間が経過するごとに、もっと効率を上げるにはどうすれば良いのか、という考えが頭をよぎるようになっていった。


 これがスローライフオーラを消費するということなのか?


 こんなのでアイデンティティが崩壊するのか?


 ちょっと大げさになんじゃないか?


 スローライフオーラ魔法は使っても問題ないのかもしれないな。



 最後は光線だが、これはやめておくか。


 変なところに当たって、弁償しろと言われたら困るからな。


 よし、今回はこれで終わりにしようか。


 明日も学校があるし、風呂に入って寝よう。



 次の日。


 俺たちは集合場所にやって来た。


 クゥーネとリョールはすでに来ていた。


 その後、すぐに先生もやって来た。


「おはよう、生徒諸君」


「おはようございます!」


「では、さっそくダンジョンに入るとしよう。今日はボス部屋の先に行ってみよう」


「はい!」


 二日目なのに、さらに進むのか。


 やはりスパルタ教育だな。



 ボス部屋の前まで小走りで進んだ。


 道中のシレモンは先生が瞬殺してくれた。


 さすがはダンジョンコースの教師だな。


 そして、さらに先に進んだ。



 下り階段を発見した。


 なぜかレッドカーペットが敷いてある豪華な階段だ。


 宮殿にありそうだな。


 なんで洞窟に、こんなデザインの階段を配置したのだろう?


 意味が分からんなぁ。


「生徒諸君、ダンジョンにはこのように階段があり、次の階層が用意されていることがある」


「されていないこともあるのですか?」


「そういう場所もある。そして、次の階層へ行くと敵が強くなっている。先に進むかはよく考えるように!」


「はい!」


 なるほど、勉強になるなぁ。


「今日はこのまま先に進む。付いて来なさい」


 俺たちは階段を下りた。



 地下一階にやって来た。


 どこぞのドーム何個分という単位を用いる必要があるくらい広い空間に、棚とハンガーラックが大量に並べてある。


 そこにさまざまな服が置いてある。


 衣服を着たマネキンもいる。


 天井と壁は白く塗られている。


 床には黒い木目調のフロアタイルが敷き詰められている。


 白く光る電球が天井の各地に吊るされているため非常に明るい。


 ここは大型の服屋なのか?


「このように階層を移動すると、突然周囲の環境が変わることがある。冷静に対処するように。引き返すという手段もあるということを覚えておくように」


「はい」


「ここのような店舗型の場合、置いてある商品がすべてシレモンである可能性がある」


「えっ!? ここもなんですか!?」


「そうだ。不用意に触らないように。それから名前を尋ねないように」


 あの服は全部シレモンなのかよっ!?


 とてつもない数だぞ!?


 ここってとんでもない危険地帯じゃないか!?


 学生を連れて来て良いのかよっ!?


「さあ、行こう。警戒を怠らないように」


 俺たちは先に進んだ。



 ここって碁盤目状になっているんだな。


 広いけど迷わずに済みそうだな。


 えっ!?

 なんだあれは!?


 さまざまな形の葉が並んでいる棚があった。


 なんで葉が置いてあるんだ?


 ここって服屋ではなかったのか?


「いらっしゃいませダッペ~!」


 頭のてっぺんからつま先まで、大量の葉をくっ付けている人型の何かに話しかけられた。


 身長は二メートルくらいだ。


 な、なんだこいつは!?


「今オススメのファッションは、この葉ダッペ! 自然との調和をイメージした最先端の服ダッペ!!」


 最先端!?


 最古の間違いじゃないのか!?


「お値段は千兆よポイントダッペ!!」


 千兆!?


 高すぎるだろ!?


 ボッタクリだ!!


「このようにダンジョン内ではシレモンが商売をしていることがある。よポイントを支払えば実際に商品を受け取れる」


「そうなんですか。あの葉は何かの役に立つのですか?」


「不明だ。購入者がいないからな」


 まあ、あの値段では当然か。

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