第23話 アイデンティティ崩壊の危機?

 ダンジョンの入り口に戻って来た。


「これで今日の授業は終了だ。次の授業は明日の同じ時間から始める。そこの門の前に集合してくれ」


「はい、分かりました」


「では、解散!」


「お疲れ様でした!」


 では、帰るとするか。


 おっと、その前に……


「預かっていたシレモンを返すよ。ディディ、アイテムボックスから出してくれ」


「了解したのである」


 クゥーネとリョールにシレモンを返却した。


「ありがとうございます。では、わたくしたちはこれで失礼します」


 クゥーネとリョールは奉納をして帰って行った。


 さあ、俺たちも奉納しようか。


 不審者の皮は一〇よポイントだった。


 これで俺の所持しているよポイントは、一五一〇になった。


 結構たまったな。


 後で何かを購入するとしようか。



 その後、不審者の綿を売りに行った。


 一万ジカァで買い取ってもらえた。


 意外と高値で売れるんだな。


 受付の方からお札を一枚受け取った。


 これが一万ジカァ札か。


 こいつにもよく分からん抽象画が描かれているなぁ。


 茶色っぽい紙幣に、黒い人間のシルエットの周囲に、色取り取りの長方形の何かが舞っている絵だ。


 これは何を表現しているのだろう?


 金に溺れる人間なのか?


 まあ、そんなのどうでもいいか。


 さあ、帰ろう。



 孤児院に着いた。


 あたりはすっかり暗くなってしまっている。


「おや? ハヤト、おかえり」


「ただいま帰りました」


「ちょうど夕飯ができたところさ。食べようか」


「分かりましたよ」


 そいつは良いタイミングだな。


 みんなで夕食を取った。


 食事中は学校の話題で盛り上がった。


 院長もあの学校に通っていたらしく、当時の様子を教えてもらった。


 みんな仲良く平和な学校らしい。


 人形魔法で動く教師のおかげなのかな?


 トレットさんは学校に通っていないらしい。


 今のところ通う必要がないそうだ。



 食事を終えて、寝室にやって来た。


 さて、何か魔法を購入しようか。


 何が良いかな?


 えっ!?

 な、なんだこれは!?


 こんな魔法あったっけ!?


 ちょっとマシローおじさんの魔法入門書を読み返してみようか!



 あっ、あった!?


 『スローライフオーラ魔法』


 スローライフオーラを消費し、さまざまなことができるようになる魔法。


 身体能力を向上させる。

 光線のように撃ち出す。

 剣などの武器を形成する。


 といったことができる。


 お値段一五〇〇よポイント。


 マシローおじさんの評価。


 スローライフオーラをどれほど所持しているかによって評価が変わる魔法。


 大量に所持している場合はとてつもなく強力、まったくない場合は購入する価値のない魔法になる。


 自身がどれだけスローライフを望んでいるのか、よく考えて購入しよう。


 スローライフオーラを消費した場合、効率やスピードを最優先したくなる。


 睡眠時間を削って活動してしまうことがあり、過労で倒れる危険がある。

 この魔法を購入する方は、休みは適度に取った方が効率が良いということを頭に入れておいた方が良いだろう。


 スローライフが重要だと考えている方は、アイデンティティの崩壊を招く可能性があるので要注意。


 よポイントを支払うことで、スローライフオーラの消費量を減らすことができる。


 出した武器は一〇分経過すると消える。

 よポイントを支払うと、時間を延長することができる。


 購入しても姿は変化しない。


 使用者たちの評価。


 スローライフオーラさえあればすさまじく強力だけど、なくなると弱体化して役に立たなくなる。

 使用後は仕事の効率を上げる方法や、早く作業を終える方法を考えてしまうようになるので、戦闘以外の仕事をする時でも役立つことがある。


 スローライフオーラが少なかったようで、あまり役に立たなかった。

 彼女に仕事ばかりで相手をしてくれないから別れると言われた、これはクソ魔法。



 こんな魔法あったのか。


 前に読んだ時は見逃していたみたいだな。


 俺ならこの魔法を使いこなせるのではないか?


 だが、アイデンティティが崩壊する可能性があるというのが気になるな……


 購入すべきなのだろうか?


 うーむ、どうするか?


 ちょっとみんなと相談してみようか。


「そうじゃのう…… アイデンティティの崩壊というのが気になるところじゃな」


「そこは使いすぎなきゃ良いんじゃねぇのか? 気になるなら購入してみると良いと思うぜ! 役に立たなかったら、またシチローにエリンシシを倒してもらえば良いじゃねぇか!」


「ワシをこき使うでない! 体当たりはそれなりに痛いのじゃぞ! ワシは購入反対じゃ!!」


「気になるなら購入してみるのである」


「買えば良いじゃないッスか~。なんとかなりますよ~」


「賛成三票、反対一票か。よし、購入しよう!! シチロー、使えない魔法だった時は頼むぞ!!」


「人使いが荒すぎじゃぁぁっ!!」



 では、買うとしようか。


 ワライトールショッピングウィンドウを開き、購入した。


 これでスローライフオーラ魔法を使えるようになったのか?


 どうなのだろう?


 試しに使ってみようか?


 いや、消費するものがある以上、慎重に行動した方が良いだろう。


 ここはサンクトに神鑑定をしてもらおうか。


 俺がどのくらいスローライフオーラを持っていて、どれだけ消費するとマズいのか教えてもらおう。


「おっ、やるか! 良いぜ、やってやろうじゃねぇか!!」


 サンクトが儀式を始めた。


 さて、本でも読みながら待っているか。



「おっ、来たぜ!!」


「では、聞かせてくれ」


「ああ、魔法を使えるようになっているぜ! 効果は本に書いてある通りだ。使い方は使いたいと思うだけで使えるぜ!」


 使用方法は単純なんだな。


「そうなのか。それで俺のスローライフオーラの量はどのくらいなんだ? どれだけ魔法を使えるんだ?」


「それは使ってみてのお楽しみだそうだぜ!」


「なんだそれは!? 肝心な部分は教えてくれなかったのかよっ!?」


 なんということだ!?


 おのれ、カスクソ邪神め!!

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