第22話 白黒の扉
しばらく歩いて行くと、両開きの扉があった。
重厚感のある白い金属製のものだ。
扉には金で縁取りをされている、赤い宝箱のようなものが描かれている。
ここはなんなのだろうか?
「ここは『宝箱部屋』と呼ばれている部屋だ」
扉に描かれているから、そう呼ばれているのかな?
単純だなぁ。
「ここに入るとさまざまなイベントが起こる」
「さまざまですか? 具体的にはどのようなことが起こるのですか?」
「何かが手に入る、シレモンに襲われる、何も起こらない等々だ」
確かにさまざまだな。
「ここにはなぜか一日一回しか入れない。その日の運試しをするような部屋だ」
なんでそんな訳の分からん部屋があるのだろうか?
カスクソ邪神が娯楽用に用意したのか?
「入らなければダンジョンの奥に進めないなんてことはない。入るかどうかは自由だ」
へぇ、そういうものなのか。
本当に娯楽用って感じだな。
「では、生徒諸君に質問しよう。ここに入ってみるか?」
えっ!?
うーむ、どうしようか?
「美味しいものがあるかも。入ってみたい」
クゥーネは賛成なのか。
「わたくしは入らなくて良いと思います」
リョールは反対と。
「ワシは入ってみたいぞい!!」
「俺君もだ! 面白そうじゃねぇか!!」
シチローとサンクトは賛成。
「敵が出るのなら入らない方が安全なのである」
「面倒なんで入らなくて良いッスよ~」
ディディとキューストは反対なのか。
キレイに真っ二つに分かれたな。
俺の意見で決まってしまうのか。
さて、どうしよう?
何か手に入ることを期待して入るか、安全のために入らないか。
攻めるか、守るかだな。
ここは攻めるか!
入ってみよう!
弱腰になっていては、スローライフは送れないよな!!
「入ってみたいです!」
「そうか。では、入ってみようか。入りたくない者は無理に入って来なくても良いからな」
俺たちは扉を開けた。
中は何もないだだっ広い空間だった。
天井、壁、床の材質は他と変わらない。
「この部屋の中央に行くと何かが起こる。行ってみよう」
俺たちは部屋の中央に向かった。
反対していたリョールも部屋に入ってきている。
中央にやって来た。
さて、何が起こるのだろうな?
期待と不安が入り混じる、そんな心境だな。
突然後ろの方で、扉が勢いよく閉まる音がした。
な、なんだ!?
まさか閉じ込められたのか!?
俺は後ろを向いた。
あれ?
扉は開いたままだぞ?
どういうことだ!?
さっきの音はなんだったんだ!?
「どうやら今回のイベントは先程の音だったようだな」
「ええっ!? それだけなんですか!?」
「他には何も起きていない。あれで終わりのようだ」
くだらないイタズラだな!?
「まあ、ここはこういう部屋だ。さあ、先に進もうか」
「はい」
カスクソ邪神め、くだらないものを作りやがって!!
しばらく歩いて行くと、また両開きの扉を発見した。
今度は重厚感のある黒い金属製のものだ。
ここは特別な部屋である、という印象を受けるぞ。
この中に何があるのだろうか?
「ここは『ボス部屋』と呼ばれている場所だ。この中には『ボス』と呼ばれている、強力なシレモンが待ち構えている」
ボス部屋か。
そんなゲームみたいな部屋もあるんだな。
「中にいるシレモンを倒さなければ、先に進めないダンジョンもある。ここは違うがな」
ダンジョンによって違うのか。
「中に入ると扉が勝手に閉まり、シレモンを倒すまで出られなくなる場所もある。ちなみにここは出られる場所だがな」
そんな危険な場所もあるのか。
「ここのシレモンは『サンドゴーレム』という名前だそうだ」
砂でできているシレモンなのか。
「二文字ランクだが他の個体よりも強力だ」
強力な個体か。
もうそんなのが現れるのか。
今の戦力でどうにかなるのかな?
うーむ、もっと戦力を増強する方法を考えた方が良いかもしれないな。
「ボスは部屋の中に入ってきた者しか襲わない。よって扉を開けて中の様子を確認することはできる。では、さっそく見てみようか」
先生が扉を開けた。
中は宝箱部屋と同じような部屋だった。
そして、部屋の中央にボスと思われる何かがいた。
あれがサンドゴーレム!?
そこにいたのは、変態人間だった。
頭に銀色の金属製と思われるバケツをかぶり、
他は何も身に着けていない。
身長は三メートルくらい。
筋骨隆々の男性型で、日焼けしたような肌の色をしている。
腕を組んで、仁王立ちしている。
なんだあれは!?
砂っぽいところがまったくないじゃないか!?
どういうことなんだ!?
「見えるか? あれがサンドゴーレムだ。部屋の中に入らないように注意して見るんだ」
「先生、アレの何がサンドなんですか?」
「あれの中には砂が入っている」
ええっ!?
そんな体しているのかよっ!?
「あいつはどんな攻撃をしてくるんですか?」
「砂を
砂を使って攻撃してくるのか。
そこはサンドゴーレムっぽいな。
見た目は全然そんな感じはしないけど。
「さて、生徒諸君に質問しよう。ボスと戦ってみるか?」
えっ!?
それはちょっとなぁ……
いきなり戦うのは無謀だよな……
「やめておきます」
「わたくしもやめておきます」
「食べられなさそうだし、今回は退く」
満場一致で戦わないに決定した。
「慎重だな。長生きできそうだ。では、そろそろ今日の授業を終えよう。さあ、戻ろう」
俺たちは来た道を戻った。
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