第20話 さっそくダンジョンへ
「では、授業を始める前に自己紹介をしようか。まずは私から、教師の『サイデッサン五五号』だ」
はぁっ!?
なんだその名前は!?
ネーミングセンスがひどすぎないか!?
「『人形魔法』で動く教師人形だ。よろしく頼む」
人形魔法!?
教師人形!?
この世界には、そんな魔法があるのか!?
すごいもんだま!
この世界は人手不足が起こりにくそうだ!
「では、君たちも順番に自己紹介をしてくれ」
「わたしは『クゥーネ・フトゥ』クゥーネで良い。よろしく」
金属の子がそう言った。
「わたくしは『リョール・ニィル』と申します。リョールとお呼びください。よろしくお願いします」
包丁の子がそう言った。
その後、俺たちも自己紹介をした。
「では、さっそくダンジョンへ向かおうか。付いて来なさい」
座学なしで、いきなり突撃するの!?
ここってスパルタ教育なのか!?
まあ、いい、スローライフのためならやってやる!!
さあ、行くぞ!
学校の裏手にやって来た。
そこにはコンクリートと思われるもので造られた、巨大な白い塀があった。
高さは一〇メートルくらい、上には有刺鉄線が張り巡らされている。
物々しい場所だな。
まるで刑務所のようだ。
大きな金属製の、白い両開きの扉がある。
その周囲には、先生と似たような姿をした人形が四体立っている。
彼らは見張りみたいだな。
「この中にダンジョンがある」
先生が中に入って行った。
この向こうにダンジョンがあるのか。
厳重に管理されているんだな。
俺たちも中に入った。
塀の中には、コンビニのような建物が五軒横並びになっていた。
五軒とも出入り口の上部に、赤い壁面看板が取り付けられており、そこに『ダンジョン』と白い文字で書かれていた。
コンビニのようにガラス張りになっている場所もあり、外から中の様子が見えるようになっている。
内部もコンビニのように、商品が並んでいるようだ。
あれがダンジョン?
ダンジョンという名前のコンビニじゃないのか?
「あの建物の内部がダンジョンになっている」
先生がそう言った。
本当にあれがダンジョンなのか。
「ダンジョンの外観はさまざまだ。洞窟、神殿、塔、ビルなどがある。なぜかここのものは、すべて店舗のような見た目だがな」
へぇ、全部コンビニではないのか。
「ダンジョンの入り口の近くには、必ずモヒジ・カンゾウのお堂がある。原因は不明だ」
ああ、確かにあるぞ。
カスクソ邪神が気を利かせてくれたのかな?
「では、中に入るぞ」
「どれに入るのですか?」
「今回は真ん中のダンジョンだ」
「あの五か所に違いはあるのですか?」
「あれらにはほとんどない。だが、他のダンジョンの場合は大きく違うこともある。初めて入るダンジョンには気を付けるように。可能ならあらかじめ情報を集めてから入った方が良い」
「分かりましたよ」
勉強になるなぁ。
まあ、学校だから当然だけど。
俺たちはダンジョンの中に入った。
あれ?
中は洞窟のようだぞ?
天井、壁、床、すべてが茶色い岩や土のようなもので構成されている。
なぜか天井が白く光っており、内部は明るい。
俺たち全員が横列で歩けるくらい広い通路が一直線に伸びている。
なんで中は洞窟みたいなんだ?
外から見た時はコンビニみたいだったのにな?
「見ての通り、ダンジョンは外装と内装がまったく違うことが多い。原因は不明だ」
原因不明なのか。
神の気まぐれなのかな?
「では、進もう。私の後に付いて来なさい」
俺たちは先生の後を付いて行った。
一本道を歩いて行くと、広い空間に出た。
そこには商品棚が多数あり、食品や日用雑貨が並べられていた。
なんだここは!?
まるでコンビニの中みたいじゃないか!?
外装だけじゃなかったのかよっ!?
「いらっしゃいませ~コン!」
緑色の制服を着た店員と思われるおっさんが声をかけてきた。
ん?
変な語尾が付いてなかったか?
あいつはシレモンなのか?
「これがダンジョンの罠の一種だ」
ええっ!?
これが!?
いったいどういう罠なんだ!?
「さて、生徒諸君、問題を出そう。ここでどのような対応をすれば良いと思う?」
えっ?
うーむ、そうだなぁ……
「分かった! 食料を食べれば良い!!」
クゥーネがそう答えた。
ええっ!?
それはないだろう!?
こいつは食い意地が張りすぎなんじゃないか!?
「不正解! それはかなり危険な選択だ」
「なぜ危険なんですか?」
「ここの商品はすべてシレモンだからだ。手に取った瞬間に襲ってくる」
これ全部!?
なんじゃそりゃぁっ!?
怖すぎだろ!?
コンビニと同じくらい商品が並んでいるんだぞ!?
「なら、無視して通りすぎれば良いのでしょうか?」
リョールがそう答えた。
無難な選択だな。
「早く奥に進みたい場合は、それが正解だ。ただ、お金やよポイントを稼ぎたい場合は、もっと良い方法がある。それはなんだと思う?」
より稼げる方法か……
なんだろうか?
「ここはワシが当ててやろう! 動かないシレモンを一方的に攻撃すれば良いのじゃ!!」
ええっ!?
それはひどいんじゃないか、シチロー!?
「残念ながら不正解だ」
「な、なんじゃと!? そんなバカな!?」
「ここで商品を攻撃した場合は、店員が襲いかかってくる。店員の人数が多かった場合は、とても危険だ」
ほう、そうなのか。
「なら、正解はなんなのじゃ!?」
「まずは店員を倒すことだ。その後に商品を倒す。そうすれば安全だ」
なるほど、倒す順番が重要なのか。
「では、生徒諸君。ここでやってはいけない危険な行動というものがある。それはなんだと思う?」
えっ!?
なんだろう?
「分からないか? では、実際やってみせよう」
危険と言ったのに、わざわざやるのか!?
「君たちはシレモンなのか?」
先生が商品棚に向かってそう言った。
「その通りだッペ! 我々はシレモンの『コンビィ・ニノウリモン』だッペ! 人間ども覚悟するッペ!!」
商品たちがそう言って、先生に飛びかかって来たぞ!?
これは確かに危険だな!?
というか、やるなよっ!?
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