第11話 邪神の世界
おはようございます。
ん?
なんか音がするぞ?
何かを落としたような音と、その落ちたものが転がるような感じの音だ。
サイコロを転がした音かな?
なんだこれは?
「おはよう、ハヤト。何か変な音がするのう」
「おはよう、シチローにも聞こえたか。これはなんだろうな?」
おや?
ドタドタと走る音が聞こえてきた。
誰かがこちらに来るようだな。
「ハヤト、起きてる!? 避難するよ!」
突然寝室にやって来た院長にそう言われた。
「おはようございます。なぜ避難するんですか?」
「説明は後! とにかく、行くよ!」
ただごとではなさそうだな。
ここは素直に従っておこう。
俺たちは院長に付いて行った。
孤児院の外に出た。
晴れてはいたが、地面には水たまりが多数できていた。
「おはよう、ハヤト君」
「おはようございます」
トレットさんも孤児院から出て来た。
「乗り物を出すからね」
院長がそう言うと、院長の前に白い巨大なプラカードのようなものが現れた。
大きさは縦横ともに一メートル半くらい。
厚さは数ミリくらい。
大きな赤い文字で『ストライキ決行中』と書いてある。
なんでこんなことが書いてあるんだよっ!?
「さあ、これに乗るんだよ!」
院長に促され、巨大プラカードに乗った。
「それじゃあ、行くよ!」
巨大プラカードが空を飛んだ。
ええええええええっ!!!
な、なんだこれは!?
なんで飛んでんの!?
しかも、結構速いし!?
うわっ!?
な、なんじゃありゃぁっ!?
ふと、横を見るとトレットさんが茶色の和式便器のようなものに乗って飛んでいた。
大きさはトレットさんひとり分くらいだ。
あれはもしかして、人間のお茶魔法の一種なのか!?
人間のお茶魔法って、便器ではなく、便利だな!!
しばらく進むと、西洋風の石造りの城壁のようなものが見えてきた。
高さは一〇メートルくらいだ。
俺たちはそこへ向かっているようだ。
なんだあそこは?
観光名所か?
「さあ、着いたよ。ここがアイダレ町だよ」
ここがアイダレだったのか。
「いろいろ聞きたいことがあるだろうけど、まずは町に入ろうか」
「分かりました」
「入る時に質問をされるけど、何も答えないようにね」
「はい、分かりましたよ」
質問?
なんで答えちゃダメなんだ?
まあ、行ってみれば分かることか。
俺たちは城門の前にやって来た。
迷彩服を着て、自動小銃のようなものを持った方が七名いる。
なんか物々しいな。
「君はシレモンなのか?」
城門の上の方から声が聞こえてきた。
なんだ今のは?
おや?
上の方にスピーカーのようなものが付いているぞ。
あそこから流れてきたようだ。
ああ、なるほど、あれはシレモンの判別装置なのか。
こんな仕掛けで見分けているのか。
町の中に入った。
アスファルトと思われるものが敷かれた道路がある。
その両脇に街路樹と歩道がある。
そして、その向こうには、さまざまな建築様式の建物が並んでいる。
和風、洋風、中華風、いろいろあるぞ。
なんだこの統一感のなさは!?
ちょっと院長に聞いてみようか。
「あれはさまざまな建築様式の建物を建ててみたいという人たちがいて、こうなったらしいよ」
「それってもしかして、転生者なんですか?」
「ああ、そうだよ。転生者たちは全員やりたいことがあって、この星に生まれるみたいなんだよ」
「へぇ、そうなんですか」
「どうやらカスクソ邪神が、そういう人を選んで連れて来ているみたいなんだよ」
「それはなぜなんです?」
「そこまでは分からないけど、そういう人が好きなんじゃないかねぇ?」
そういえば、トゥハァが神は進化を望んでいると言っていたな。
そのせいなのかな?
町の中を歩いている。
周囲には普通の人と、ギャグ系魔法の購入者であることが明白な人がいる。
その比率は購入者の方がちょっと多いような気がする。
それにしても、妙な光景だ。
家具、調理器具、家電製品、雑貨、楽器に人間の手足が生えている人が歩いているぞ。
この光景を見ていると、俺は異世界に来たんだなと感じてしまうな。
おや?
車にバイクに自転車のようなものまであるのか。
こういうところは地球みたいだな。
公園のような場所にやって来た。
林、芝生、木製のベンチ、ブランコや滑り台などの遊具が置いてある広い場所だ。
俺たちはベンチに腰掛けようとしたが、ぬれていたので止めた。
仕方ないので、立ち話をすることになった。
「さて、ここに来た理由を話そうか」
いったいなんなのだろうな?
「それは『試練の多面体の日』だからだよ」
「それはなんですか?」
「カスクソ邪神が、この世界に何かをしてくる日なんだよ。朝に何かが転がる音がしただろ? あれは邪神がサイコロを振って、何をするか決めているらしいよ」
なんだそれは!?
あの邪神め!
意味の分からんことをやりやがって!?
「何かとはなんですか?」
「それは起こってみるまで分からないんだ。今までは突然シレモンの数が増えたり、ダンジョンができたりするんだよ」
「それで念のために避難したわけですか」
「そういうことさ」
あの邪神、世界に干渉しすぎだろ!?
「その試練の多面体の日というのは、定期的に起こるんですか?」
「いや、不定期だね。何か月も起こらないこともあれば、連日起こることもあるよ」
「迷惑ですね」
「そうだねぇ」
「ところで、あの巨大なプラカードのようなものはなんなのですか?」
「あれは
罷工魔法か。
もしかして、飛行とかけたダジャレなのか!?
く、くだらなさすぎるぞ!?
まあ、それでも便利そうな魔法ではあるな。
俺も購入してみようかな?
「そういえば、朝食を取ってなかったね。その辺で食べていこうか」
俺たちは日本にあるチェーン店の定食屋みたいな店で、朝食を取った。
食べたのは和定食だ。
ご飯、豆腐とネギのみそ汁、焼いた白見魚の切り身、キュウリのようなものの漬物、たくわん、ニンジンや芋のようなものの煮物、ほうれん草のようなもののおひたしがあった。
どれも美味しかった。
これも転生者が広めてくれたのかな?
ありがたいなぁ。
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