第10話 学校があるらしい
さて、これで魔法の購入は終了だな。
次はダンジョンの場所を調べようか。
では、院長を探しに行こう。
院長は台所にいた。
なんだか良い香りがするぞ。
これはカレーの匂いじゃないか?
転生者が作って広めたのかな?
「おや? ハヤト、魔法を購入できたみたいだね」
「はい、この姿を見ても驚かないんですね」
「まあ、見慣れているからね」
やはりギャグ系魔法の購入者は珍しくないようだな。
この世界の人って、とても心が広いのかもしれない。
人種差別はなさそうだな。
「それで何か用でもあるのかい?」
「はい、実は院長に聞きたいことがありまして……」
「なんだい?」
「『どんなアホでもスローライフ許可証の入手方法が分かるかもしれないダンジョン』という名前のダンジョンは、どこにありますか?」
「ああ、スローライフの…… 存在は知っているけど、場所までは分からないねぇ」
「そうですか……」
当てが外れたか。
では、どうするかな?
「ハヤト、学校に通ってみたらどうだい?」
「学校に? なぜですか?」
今更学校に行くのもなぁ。
前世で通っていたしな。
「学校にはダンジョンに関する授業があるからね。そこで知識を身に付けた方が良いよ。目的のダンジョンも教えてもらえるだろうし」
「なるほど」
ダンジョンには敵だの、罠だの、危険がいっぱいらしいからな。
キチンと対処法を習った方が良いのかもしれない。
「学校のパンフレットが物置にあったはず、見てみると良いよ」
では、さっそく探しに行こう。
院長に礼を言い、再度物置に向かった。
物置にやって来た。
みんなにも手伝ってもらって、パンフレットを探した。
「ハヤトの兄さん、本棚の上の方にありましたよ~。どうぞ~」
「おっ、ありがとう!」
では、読んでみるか。
パンフレットの表紙には、学校名と校舎の写真が載っていた。
日本にある学校と、そう変わらない建物だ。
ふむ、学校の名前は『エヴェオサ国立アイダレ町学校』というのか。
今俺がいる場所は、エヴェオサという国のアイダレという町なのか?
いや、そうとは限らないか。
後で院長に聞いてみよう。
では、中を見てみよう。
ふむ、日本の学校のように何年も通うコースと、習いたいものだけを習えるコースがあるようだな。
転生者が存在する世界だから、こうなったのかな?
ダンジョンに関することを教えてくれる『ダンジョンコース』というものもあるようだ。
ただ、ごく当然のことなんだが、学費を払う必要があるぞ。
ダンジョンコースのお値段は百万ジカァだ。
まだ物価がよく分からんから、高いのか安いのかよく分からんな。
まあ、でも、なんだか高そうな気はするけどな。
さて、お金をどうするか?
この国は孤児の学費を援助してくれないのだろうか?
うーむ、どうなんだろう?
これも院長に聞いてみるか。
パンフレットを読み終えた。
よし、では、聞きに行こうか。
また台所にやって来た。
あれ?
院長はいないな。
他の部屋か?
探してみよう。
おや?
寝室から音がする。
掃除機が稼働しているような音だ。
ちょっと行ってみるか。
部屋を覗いてみると、院長が掃除機のようなものを動かしていた。
あれはなんだろう?
見た目通りの掃除機なのだろうか?
おや?
院長の腕から黒い電線のようなものが出ているぞ。
その先が掃除機のようなものにつながっている。
あれってまさか電線魔法の電気で、掃除機のようなものを動かしているのか?
ちょっと聞いてみようか。
「これかい? これは電気掃除機というものよ。ホコリやゴミを吸い取るのよ」
やはりあれは掃除機なのか。
この世界にもあるんだな。
「それって、院長の電線魔法で動いているのですか?」
「そうだよ」
へぇ、魔法をそういう風に使っているのか。
「まだ何かあるかい?」
「はい、今いるこの場所はエヴェオサという名前の国の、アイダレという町なんですか?」
「そうだよ。ただ、その名前は略称でね。正称は『エクリプス・ヴェイン・オリジン・サンシャイン国』と『アルティメット・インフィニティ・ダイアファナス・レーゾンデートル町』と言うんだよ。まあ、長すぎて、みんな略称を使っているけどね」
「そ、そんな名前なんですか……」
なんだその珍妙な名前は!?
お気に入りのカッコイイ単語を、とりあえず並べてみたって感じだな!?
「アイダレにある学校は、ここから通えそうですか?」
「ちょっと遠いけど、通えないというほどではないかな」
そんな距離なのか。
「学費を孤児院か国が出してくれたりしませんか?」
「そういうのはないね。申し訳ないが自費で通ってもらうしかないよ」
「お金を貸してくれるようなところはありませんか?」
「貸してくれるところはあるけど、子供のうちは貸してくれないと思うよ」
「そうですか。なら、お金を稼ぐ手段はありませんか?」
「今のハヤトでは、どこも雇ってくれないだろうね。シレモン退治くらいしかなさそうだよ」
うぐぐぐ……
こういう時、赤子の体は不便だなぁ。
「シレモンって、いくらくらいで売れるものなんですか?」
「この間、持ってきたエリンシシは一体、一万ジカァくらいで売れるよ。リングァエルは買い取ってもらえないことが多いね」
エリンシシを百体狩らないといけないのかよっ!?
「他に倒しやすいシレモンはいませんか?」
「倒しやすいのは買い取ってもらえないことが多いよ。エリンシシみたいな二文字ランク以上しか買い取ってもらえないと思った方が良いよ」
世の中そう都合良くはいかないか。
なんとかエリンシシを倒す方法を考えないとな。
うーん、何か武器を持てばいけるか?
「何か良い武器はありませんか?」
「武器かい? 今のハヤトにも使えそうなナイフがあるけど、役に立つのかねぇ?」
ナイフか。
まあ、ないよりはマシか。
「そのナイフ、お借りできませんか?」
「ああ、良いよ」
「ありがとうございます!」
院長からナイフを借りた。
長さ三〇センチくらい、刃渡り一五センチくらい。
色は刃が銀、柄は黒。
サバイバルナイフのような外見だ。
では、これを使った対エリンシシ用の戦法を考えてみるか。
考えていたら、夕食の時間になった。
今日の夕食はリングァエルのカレーライスだった。
この星にも米はあるんだな。
甘めのチキンカレーみたいな味で、とても美味しかった。
その後、風呂に入って寝た。
エリンシシに勝つ方法は、サッパリ思い付かなかった。
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