第8話 人間やめて何になる?

 あああああああああああああああああっ!!!!


 ものすっごく迷うぞぉぉぉっ!!!


 いったいどれにすれば良いんだよぉぉぉっ!!!


 そうだ!

 ちょっとみんなの意見も聞いてみよう!


「もちろん、ワシの進化じゃぁぁっ!! と言いたいところじゃが、まずはハヤトの安全を確保した方が良かろう。その方が安全にシレモン狩りができそうじゃ。防御関係の魔法を選ぶと良いじゃろう」


「なるほど、俺の安全か。確かに死んだり、ケガしたりなんて事態は遠慮したいからなぁ」


「おいおい、シチロー、何を言っているんだ!? 攻撃の方が重要に決まっているじゃねぇか! シレモンに攻撃される前に倒してしまえば良いんだぜ!! それが一番安全だぜ!!」


「サンクトの意見も一理あるな」


 確かにさっさと倒してしまえば安全だ。


「両方あれば理想的である」


「まあ、確かにディディの言う通りだけどさぁ。そんな都合の良い魔法はあるのかな?」


 とりあえず、探してみるか。



 あった!?


 そんな都合の良い魔法を発見したぞ!?


 その名は『ころも魔法』だ!


 この魔法を購入すると、全身が揚げ物の衣に包まれて、防御力が上がるそうだ。


 衣が硬いので素手で殴るよりは攻撃力が上がるらしい。


 さらに熱にも強くなり、なぜか身体能力が少し上がるそうだ。



 全身衣に覆われるけど、油が周囲に付くことはないので安心。

 目、耳、鼻、手は普通に機能する、生活に支障はない。


 お風呂に入れば、体の汚れは落ちる。

 口の部分が開くので、呼吸も食事もできる、歯も磨ける。


 冬は暖かい、夏でも暑くはない。

 値段の割には強い、ただカッコワルイ。


 というのが、マシローおじさんの評価だ。


 初回特典で購入できる魔法の中では、最も優秀かもしれない。

 衣のおかげでシレモンの攻撃が怖くなくなった。


 彼女にカッコワルイと言われてフラれたから、これはクソ魔法。


 というのが、使用者たちの評価だ。



 彼女はいないし、カッコワルさなんてスローライフには関係ないから、これが一番良いのかもしれないな。


 よし、これにしようか!!


 では、さっそく購入しようか!


「ハヤトよ、院長やトレットに魔法を購入することを知らせておいた方が良いのではないかのう。突然姿が変わったら、不審に思われるのではないのか?」


「確かにそうだな。では、知らせてこよう」


 院長とトレットさんに報告した。


 驚かれたりはしなかった。


 この世界ではギャグ系魔法の購入者がたくさんいるからかな?


 ただ院長からは、服を脱いでから購入してくれと言われた。


 なんでも着たままだと、服が消えるらしい。


 なんでだろうな?


 衣に覆われたせいで、服が脱げなくなるトラブルでも起こったのかもしれないな。


 では、服を脱いで、購入しよう。



 衣魔法を購入した。


 俺の体が暖かい何かに包まれたような感覚がした。


 視覚、嗅覚、聴覚に変化はない。


 これで衣魔法を購入できたのかな?


 俺は自分の右手を見てみた。


 おおっ!!

 天ぷらのような衣に包まれているぞ!!


 美味しそうなキツネ色の衣だ!!


 これが魔法か!

 すごいもんだな!!


 せっかくだから、みんなに感想を聞いてみようか!


「うむ、まあ、その、なんというか、アレじゃな……」


「本の通りだぜ!!」


「ノーコメントである」


 みんなには不評のようだな。



 さて、これで戦えるようになったはずだ。


 試しに素振りをしてみようか。


 おっ!

 ちょっと体のキレが良くなっている気がするぞ!!


 これならリングァエルくらいなら簡単に倒せるかも!?


 よし、さっそくシレモン狩りに行こうか!!


 と思ったが、まだ雨が降っている。


 今日はシレモン狩りは無理そうだな。


 仕方ない、他のことをしようか。



 そういえば、まだよポイントは残っているんだよな。


 他に何か購入できないか調べてみるか。


 まあ、残りはほんの少ししかないし、購入できるものなんてないかもしれないけどな。



 あった!?


 それもかなりの数があるぞ!?


 ちょっと見てみようか。



 『電線魔法』


 体中の穴から電線が出るようになる魔法。

 電線の太さは出て来る穴の大きさに比例する。

 電線に電気を流すこともできる。


 毛穴から電線を出しても、毛が抜けることはないから安心。

 口、鼻から出しても呼吸はできるから安心。


 お値段一〇よポイント。


 マシローおじさんの評価。


 意外と使える。

 強化なしの状態では電線が短すぎるうえに、流れる電気も弱いため、攻撃には使いづらい。


 だが、毛穴から出る電線を束ねて、体に巻き付けて防具の代わりするという使い方もできる。

 安価で防御魔法が欲しい方にはオススメ。


 魔法を使用しないと電線が出て来ないので、なるべく人間の姿のままでいたいという方にもオススメ。

 食物の出口から電線を出すと、目撃者の評価が下がる可能性があるので注意が必要。


 使用者たちの評価。


 強化すれば攻撃もできるようになって役に立つ。

 人を捨てずに済むのでオススメ。


 全身の毛穴から電線を出したら、彼女に気持ち悪いと言われてフラれた、これはクソ魔法。

 食物の出口から電線を出したら、彼女に変態と言われてフラれた、これはクソ魔法。



 『泥包装魔法』


 泥で身を包める魔法。


 お値段一よポイント。


 マシローおじさんの評価。


 強化なしでは自身の顔に薄く泥が塗られるだけ。

 美肌効果があるらしいが、戦闘では役に立たない。


 少しの強化で、全身を泥で全身を覆えるようになり、防御力が上がる。


 大幅に強化した場合は、泥を自在に操れるようになり、かなり強力になる。

 よポイントは大量に必要だが……


 使用者たちの評価。


 肌の黒ずみが消えて、顔がキレイになりました!!

 購入後、彼女に会った瞬間にフラれた、これはクソ魔法。



 『発光器魔法』


 体のどこかが光り出す魔法。


 お値段一よポイント。


 マシローおじさんの評価。


 体のどこが光るか分からないのが難点。

 目の近くが光るとまぶしくて迷惑。


 強化なしでも点滅させることができる。

 変なところが光ったら消しておこう。


 安価で購入できるのが魅力。

 よポイントがあまったら、これを購入すると良いかもしれない。


 強化すると強力な光線を発射できるようになる。


 使用者たちの評価。


 膝が光るようになった、暗いところではとても便利。

 股間が光って彼女にフラれた、これはクソ魔法。



 『求人魔法』


 何かが出現する魔法。

 おひとり様、一体のみ。


 お値段一よポイント。


 マシローおじさんの評価。


 出て来た何かの質で評価が変わる、当たりハズレの大きい魔法。

 返品する手段はない、一生付き合わなければならないので、値段の安さに釣られてはならない。


 当たりなら、おとり、偵察、陽動をやってくれたりする。

 助言をもらえることもある。


 倒されても三秒で復活する。

 攻撃能力を持った個体は確認されていない。


 ハズレの場合は、まったく役に立たないことがある。

 その場合は、よポイントをつぎ込み強化しよう。


 使用者たちの評価。


 いろいろ教えてくれたり、愚痴を聞いてくれたりして、すごくありがたい存在。

 足がとても速いので、いろいろな場面で活躍してくれる。


 怠け者で使えない、これはクソ魔法。

 彼女に見せたら、気持ち悪いと言われてフラれた、これはクソ魔法。



 この四つは、なかなか良さそうな気がする。


 購入してみようかな?

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